あたしたちのデートは家になることが多い。
どこかに行くかっていうよりもゆめや美咲と過ごすことの方が大切だから一番人目憚ることなく過ごせるあたしの部屋が多くなる。
とはいえ、まったく出かけないわけでもなくて今日はそんな日。
「あ、それでさー」
寒くなってきたこともあってゆめを誘って近くの商業施設に買い物に来たあたしは歓談中。
「あはは、彩音って相変わらずね」
相手はゆめでも美咲でもなくて同じ学校の友達。自慢ではないけれど、あたしはそれなりに顔が広い。美咲とゆめのことがあるからあんまり休みに遊びにいったりはしないけど、会えばこうして話すことはいくらでもある。
「……………」
ただ、まぁ学校の友達っていうことはつまりはゆめの知らない人ってことで、人見知りのゆめはあたしから少し離れた所であたしの様子をうかがってかれこれ十分くらいはたった。
(んー)
気にはするけど、今話してるのは去年までは同じクラスで今はあまり話さなくなってた子。久しぶりということもあってあたしとしても色々話はしたい。
「彩音? どうかしたの?」
(けど、ゆめをほっぽいとくものね……)
なんて考えていると
「っ!?」
急に腕を絡められた。
見るとゆめがあたしの腕を両手で抱えるようにして、上目づかいをしてきている。
(な、なんだこれ)
あまりに可愛過ぎる姿に胸をときめかせるものの、その次に出てきた言葉はさらにあたしの高鳴らせるものだった。
「……お姉ちゃん、もう行こ」
(はい!?)
理解できない単語があったような……
い、いやね。はっきり言ってすごい可愛いよ。腕を抱かれながら上目づかいにお姉ちゃんなんて呼ばれた日にはこのままさらいたくなるくらいに可愛いよ?
でも、いくつか問題があるわけで。
「あ、ごめんね。お姉ちゃんのこと取っちゃって」
面識のなかったゆめにあっさりとそう信じてくれたみたいでゆめに優しい声を投げかける。
「………っ」
ただ、話しかけられてもゆめは無言であたしのことをぎゅっと抱きしめるのみ。
「あ、あれ……嫌われちゃった?」
「あ……あー、えと……人見知りな子、だから……ね」
「うーん、そっか。まぁ、彩音とは学校でも話せるしここは素直に退散しますか」
「あ、う、うん。ごめん。また、学校で」
あたしだけが何が起きたか理解できないまま歯切れ悪く返すと、あたしと謎の妹がその場に取り残される。
「で、何なのそのお姉ちゃんって」
「……彩音が知らない人と話してたらこう言えばいいって教わった」
「……なるほど」
(また美咲あたりかねー)
確かに友だちと話しをしているところに妹が甘えてくれば、そっちを優先させてあげるのは心情だろう。
有効な手段なではある気がする。
とはいえ、
(色々突っ込むところはあるんだけど……)
いまだに腕を絡めてるゆめを見つめる。
身長差もあって自然と上目づかいをさせるのが
(可愛すぎる)
「ねぇ、ゆめはものは相談なんだけど今日はあたしのことお姉ちゃんって呼んでみてくれない? あ、ついでに口調もいつのも感じじゃなくてなんていうか、気弱な妹って感じで」
「? 何言ってる? バカ?」
「うっ……随分厳しいこと言ってくれますな」
自覚がないわけでもないけど。いや、でもさっきのお姉ちゃんがあまりにも可愛過ぎたこともあって引くつもりはない。
「ねぇ、ゆめお願いー、今度甘いものでも奢るから〜」
「……仕方ない。彩音がそうして欲しいならしてやる」
あまりにも安直な手かなと思ったけど、意外にもあっさりゆめは頷いてくれた。s
「よし! それじゃあ、今日はもう帰ろう」
「……まだあんまり見てないけど、いいの?」
「いいの! そんなことより帰ってお姉ちゃんと楽しいことしよう」
「……? ……変なお姉ちゃん」
(っ……)
律儀にあたしの言うことを聞いてお姉ちゃんと呼んでくれたゆめが可愛すぎてあたしは胸の高鳴りを抑えられないまま妹の手を引いて早足に家路へ着くのだった。