私と先輩のデートって言ったらほとんどが買い物になることが多い。映画とか、遊園地とかもって思わないでもないけど、先輩が遠慮をする。遊園地は乗り物とか動けないところで体調を崩しちゃうかもしれないし、映画も何かあったら途中で抜けクチャいけなくなるかもしれない。舞台とかコンサートとかも一緒。もちろん、二人でスポーツを、なんていうのもできない。
私は遊園地で乗り物とか乗らなくても、映画のクライマックスシーンで退席しても気にしない。先輩と一緒にいたいんだし、相手が先輩なら、そんなの先輩のほうが大事に決まってるもん。
でも、先輩が嫌だっていう。
「はるかさんに迷惑はかけたくありませんから」
って、
そういわれたときは悲しかった。
まだ自分のことお荷物とか思ってるのかって。
でも、ちょっと違う気もする。
二回目の告白のとき、迷惑かけてもいいって言ったし、先輩も甘えちゃうって言ってくれたけど、まだ先輩は怖いんだと思った。
先輩に確かめたわけじゃないし、きっと聞くことじゃないけど、先輩はずっとそういう恐怖を持って過ごしてきた。
こんな風には言いたくはないけど、それが私っていうこ、恋人ができたからってすぐにはなくならない。
だから今はこれでいいんだと思う。
ちゃんと二人で歩いていって、もっと先輩の隣で先輩と支えあって、少しずつ二人で出来ることを増やしていこう。
なんて、私は考えてるのだった。
それで今もデート中。
今日は、っていうより今日もちょっと駅を行ったところにあるデパートを適当にぶらついている。
まずは洋服のお店を適当にはしごして、先輩が強行に進めてきたメガネ屋さんでメガネを試着して、これが思ったよりも時間を取られたりもした。
あ、でもそれが意外に楽しくもあった。初めは先輩が次はこれ、次はこれって色々付けさせられたけど、結構印象が変わるのは新鮮だったし、先輩が可愛いって言ってくれるのは嬉しかったし、はしゃいでる先輩を見るもの楽しいし、先輩にメガネを着けてもらうのも先輩がどうしてあんなにはしゃいだのかわかるくらいに私のほうもたまに先輩が邪な感じに笑うときみたいに頬を緩めたりもした。
それで、次に来たのは
「……ど、どうかな……」
いつだったか、先輩と行こうって話したものが売っている場所。
目の前の鏡には下着姿の自分。
そう、下着売り場に来てた。
最初は先輩と二人でこれ可愛いとか、これすごいなとか見てまわるだけだったけど、先輩が試着してみてと何度もせがんできたりしたものだからこうして、つけたところだけど……
（か、可愛いは、可愛い、けど……）
先輩が選んでくれた下着は、ブラのほうがピンクを基調にしたもので薄い桃色のレースに綺麗な刺繍があしらってある。今はつけてないけどショーツのほうもセットなこともあって同じようなデザイン。
うん、可愛い。今日は服も買っちゃったし、こっちは見るだけにしようって思ってたけど買ってもいいかなって思うくらいに。
でも、これ今から先輩に見られるんだよね。
（…………）
うぅぅ、友達ときたときには結構色々見せ合ったりしたのになぁ。
先輩に見られるって思うとなんだかすごく恥ずかしいよぉ。可愛いって思うし、先輩もきっとそう言ってくれるって思うけど。
「……るかさーん？」
あ、でも先輩の場合可愛い以上になんかもっと恥ずかしいこととか言ってきそう。またゲームとか漫画とかでこんなことがありましたとか。そういえばゲームなんてほとんどしないけど、あぁいうゲームってそんなに面白いものなのかな？ 先輩がやってるところは何回か見たけど、なんかずっと読んでるだけであれなら小説を読んだりするのと変わらない気がするけど。
「はるかさん、まだですかー？」
にしてもそういうゲームやってるときの先輩ってこの娘可愛いとか、言って、別に嫉妬したりしてるわけじゃないけど……まぁ、先輩だから仕方ないけど。
ジャラ
「はるかさーん。あ、済んでるみたいですね」
というか、そういうことじゃなくて。今から私は先輩に裸を見られちゃうようなもので、別に自信がないとかじゃないけど
「んー、はるかさん。可愛いです! 似合ってます最高です」
「え、あ、ありがとうございま、わひゃああ!!」
気づくと先輩と会話をしてた私は、その現状に思わず大声を上げた。
「わっ!? ど、どうしたんですかいきなり」
「せ、せせ、先輩!! 何してるんですか!!」
「そろそろお着替えも終わったかなと思ったので」
「だ、だからってせめて一声かけてください!!」
「…………すみませんでした。ってとりあえず言っておきます」
「な、なんでとりあえずなんですか」
「それは、まぁ……置いときまして……それより」
「っ……」
せ、先輩が見てる。私のこと、私の下着姿を……
まずは肩くらいから、胸に視線が行って徐々にその視線が下がっていく
は、恥ずかしい。
だ、だって初めてなんだもん。先輩にこんな裸同然に姿を見られるのなんて。そ、そのいつかはそういうこともあるかもって思ってたけど……
「んー、最高です! その滑らかなお肌にピンクの下着。まるで妖精の森のお姫様みたいですね」
ほ、ほら、やっぱり。また変なこと言い出すんだから
（……でも）
先輩にそうやって褒めてもらえるのはやっぱり嬉しい。
けど……
「は、はい、もうおしまいです!!」
嬉しい以上に今はまだ恥ずかしくもあって恥ずかしさだけじゃない理由で真っ赤になった顔のままカーテンを閉めるのだった。
「じゃ、じゃあ次は先輩の番ですよ」
着替えを終えた私は試着室から出てくると開口一番に先輩にそういった。
「え？ い、いえ、私はいいですよ。遠慮しておきます」
先輩はまずそうして、拒否の意を示す。
「もう〜、私だってしたんですから次は先輩なんです」
「い、いえ……私は……」
先輩が困ったような声を出すのは聞こえていたけど私はこの時すでに、それをするのは決定事項と思っていて、色とりどりのブラやショーツが陳列される中、私はどれにしようかな〜と、歩き回る。
「ちょ、ちょっとはるかさん、本当にいいですってば。あ、そうだ、お腹も空きましたし、かるくお茶でもしません？」
「先輩につけてもらったらそうします」
さーてと、どれにしようかな。先輩に似合いそうなものってどんなのだろ。もちろん、先輩のことだからどれでも可愛いだろうけど、せっかくだしなんかこう、インパクトのあるものがいいかな。
なんてことを考えながら、私は先輩が困ったというよりも苦しそうな顔をしている先輩に気づかなかった。
「あ………」
そんな中私は、あるコーナーを見つけてちょっと早足に近づいていった。
そこはキャミソールが置いてあるところで、ピンクを基調とした可愛いものから、黒を基調としたアダルティーなものまで、様々なものがそろっている。なんていうか嗜好性のあるものが並んでいるところだ。
「…………」
先輩が苦しそうにしているのに気づかず私はここにしようって決めてその中から先輩に着て欲しいものを選び出し始めた。
先輩だったらどんなのがいいだろ。先輩ってちっちゃいし、あんまり大人っぽいのは似合わないかもしれないけど、キャミソールとかなら似合いそう。私だって恥ずかしくてたまらなかったんだもん。たまには先輩が困っちゃうようなのがいいかな。
とすると、似合うものっていうよりも、私が着てもらいたいものにしたほうがいいかも。
「あ、これが、いい、かな」
私がたくさんある中から見つけたのはフリフリがふんだんについたもの。普通なら着るのも絶対にためらっちゃうような、そもそも普段に着るようなものじゃない言うなれば、趣味じゃないと着ないようなキャミソール。
「先輩、これにします」
「あ……はい。了解しました」
（って、あれ？）
私がそれを渡すと先輩は、全然恥ずかしそうになんてしないっていうよりも、どこか安心したような？
な、なんだろ。そりゃあ先輩ならある意味予定の範囲内な反応だけど。もっとすごいの選ぶと思われてたとか？ でも、それでも安心したようになるっていうのは変な気が？
「じゃ、着替えてきちゃいますね。ちょっと待っててください」
「あ、はい……」
そういって試着室に向かう先輩の小さな背中を見送り、数分後その意味を知ることになる。