数時間後。
ぐったりとした私たちはベッドの上で体を寄せ合っている。
疲労はたまっているけれど、それでもここ最近冬海ちゃんとしていた時よりも穏やかな気持ち。
「ねぇ、冬海ちゃん。起きてる?」
私の胸元に顔を寄せて黙っていた冬海ちゃんに声をかける。
「……………はい」
顔をあげずに、それだけを答える冬海ちゃん。
どんな顔をしているのか、何を思っているのかわからないけれどそれでも私は冬海ちゃんの肩に手を回すとぐっとこっちへと引き寄せた。
「いくつか、冬海ちゃんに言っておきたいことがあるの」
それは本当ならこの夜を過ごす前に言おうと思っていたこと。
けれど、結果的に今の方が冬海ちゃんは受け入れてくれるかもしれない。
「…………………なん、ですか」
声には緊張がある。私のこれからの言葉に不安を持つことがわかって、背中に回した手で優しく撫でる。
「まず最初に、私が冬海ちゃんのことを好きじゃないなんてことはないよ」
「っ」
「冬海ちゃんと一緒の部屋でよかったって思ってる。日本に来て一人で不安だった私。冬海ちゃんみたいに可愛い後輩が一緒に居てくれたっていうのは本当に感謝してる」
「鈴さん……」
安心したような声と、わずかに触れた髪に冬海ちゃんが顔をあげてくれたことを感じる。
ただそんな姿を見せてくれる冬海ちゃんに私は「でも」と続ける。
「……今冬海ちゃんの好きと私の好きは……一緒じゃないし、このままでいいとは思ってない」
「……っ」
こんなこと私が言っていいことじゃないかもしれないけれど、ただ冬海ちゃんの望む言葉だけを口にしてもそれはお互いのためにならない。
「本当はね、何よりも冬海ちゃんのことを考えなきゃいけないって分かってる。私の責任でもあるから。ただ……」
今頭に浮かぶのは、あの人のこと。
(……瑞奈さんの言う通りやっぱり私はあの人のことが好きなのかもしれない)
でも、それは瑞奈さんと同じ愛。
「今は他にしたいって思うことがあるの」
「……それは、なん、ですか?」
私よりも大切なことなんですか? って続いたような気がする。
「ごめんね。それは言えない。でも……」
あの人の力になって、この寮の歪みの元をただすことは必要なことだって思えた。
それが冬海ちゃんとの関係に区切りをつけるためにも。
「少しだけ待っててほしい」
何をするかなんて言えない。今、冬海ちゃんに言えるのはここまで。謝罪をしなきゃいけないし、これからのことも話さないといけない。
でも……それは今したいことじゃないの。
「冬海ちゃんとのこと、ちゃんと話をする。だから少しだけ待ってて」
ひどいことを言っている。
冬海ちゃんにとって私のしたいことなんてどうでもいいはずなのに、冬海ちゃんはただ私に好きになってもらいたいだけなのに、勝手なことを言って距離を取ろうとしている。
また冬海ちゃんを刺激してもおかしくなことなのに
「……はい」
冬海ちゃんは私に甘えるように抱き着くとそういってくれた。
そこには以前の、私がまだ変えてしまう前の冬海ちゃんがいたような気がして
「ありがとう」
と感謝を伝えながら彼女のことを優しく抱きしめるのだった。
11−6/12話