「んっ……ふぁ……んぁ」
恥ずかしい。
「あむ。ちゅ……はむ」
ベッドに倒されながら服を捲りあげられて、ブラすら取り去られている。
「はぁ…んっ……だ、め……」
お風呂場でもない場所で肌をさらす心細さと、その普通は触れられることのない肌に触れられることへの羞恥に心が揺さぶられる。
「んふふふ、どう鈴ちゃん。気持ちいい?」
胸に吸い付きながら蘭先輩は上目づかいに問いかける。
「っ……そんな、こと、ありません」
涙目になりながらも私はそうやって答えた。こんなのはおかしいことで認めちゃいけないこと。
「ちゅ……ん。確かに、前より反応悪いかもね」
蘭先輩は私の胸に吸い付いたり、緩急をつけて揉みながら嘆息したように口を開いた。
もしかしたらこのままやめてくれるかもなんていう、そんな期待を一瞬だけ抱いたけど、
「……じゃあ、こういうのはどうかしら?」
この人がそんなことを許してくれるはずはなかった。
蘭先輩は一端体を離すと、枕元の引き出しをあけて何かを取り出した。
「ちょっと、我慢してね」
「え?」
なにがなんだかわからないまま蘭先輩の手が私の顔に伸びてきたかと思うと
「きゃ……!」
視界が真っ暗になった。
(アイ、マスク……?)
一瞬見えたのがそうだと知ったけど、なんでこんなことをされているのかわからない。
「だめよ、外しちゃ」
いつもの通りに蘭先輩は楽しそうに言って、もう一度私の体に手を伸ばした。
「っぁ……!」
目が見えないのに肌を触れられることに恐怖とそれだけじゃないような感覚に背筋を震わせた。
「どう? 目が見えないと敏感になるでしょ」
そう言って、蘭先輩は私の胸に指を滑らせていって、なだらかな頂の頂点にくすぐる様に撫でた。
「ぁん……っ」
「けど、これだけじゃないのよね」
「え?」
体が重なる感触と
「どう? 鈴、気持ちいい?」
「っ!!」
蘭先輩の声。
けど、千秋さんみたいな、口調。千秋さんをまねた声。
その声を聞いたとたんに体がビクンってなった。
背中を沿った私を見てしてやったりという顔蘭先輩がしているなんて知らずに体を揺さぶる快感に翻弄される。
「鈴? こっちはどうだい?」
「ぁぁ……」
目の前にいるのは蘭先輩そんなのはわかっているの。知っているの。
けど、見えないから……まるで本当に千秋さんがいるような、千秋さんが触れてくれているように思うことができる。
「ここ、濡れてきてるよ。エッチなんだね、鈴は」
「っ〜〜」
クロッチ部分に触れられて、確かにそこが湿ってるのを感じちゃった。さっきまではそんなことなかったのに。
(は、ずかしい……)
目が見えないから?
そう、きっと目が見えないせいですごく恥ずかしくて、視覚が失われている分肌の感覚が鋭くなってる。
あそこが濡れてきちゃったのは、それだけの理由。
「っぁん!? ちゅ……じゅぁ……にゅぷ、ちゅる」
急なキス。熱い舌が艶めかしい音を立てて、ほんの少し前までは拒絶していた体が、今は少しだけ応えている。
「鈴は唇も気持ちいいね。もっと、もっとよくしてあげるよ」
言って今度は胸に手と唇が動いていった。
優しく乳首を舐め上げて、強めに胸が責められて形が変わってるのがわかる。
少し痛くて、すごく恥ずかしくて……けど、その中にある認めちゃいけない感覚。
「ん……ふぁう……っ」
「声、我慢しないで。鈴の可愛い声を聞かせてよ」
(ち、がう……)
今私に触れているのは千秋さんじゃない。それを私は知っている。
けど、見えないから。
「強情だね、鈴は。けど、体は正直だよ。ショーツの染みが大きくなってる」
「っ……」
チュク。
「っ!!」
「ほら、指がすんなり入っちゃった」
ぬるって指が滑っていったのがわかった。
「はぁ…ああ、あ……ふあ……ぁ」
「ぬるぬるしたのがどんどん溢れてくる。指がべどべどになっちゃうよ」
「っあぁっ……ふああ、ぁあ」
(き、もち……いい)
浅いところを千秋さんの……蘭先輩の指が何度も往復してそのたびに体がびりびりとしびれが走っていく。
「鈴。腰、浮いてるよ?」
「え? あ……」
気づいてなかった。無意識に蘭先輩の指を求めるようなことを体がしちゃってるのに気づかなかった。
「っ……」
恥ずかしくて瞳が熱くなった。
「大丈夫だよ。エッチな鈴のことも私は大好きだからさ」
(やめて……やめて。千秋さんみたいに言わないで)
千秋さんは……千秋さんはこんなこと言わない。こんなことをしない。
けど……もう私の体には千秋さんが触れた感覚が残ってて……
「っあ……ぁ、っ」
それを思い出しちゃうと、体が一気に熱を持ってしまう。
体がもっと刺激を求めるかのように反って指を求めた。
多分、それを見抜かれて
「エッチだね、鈴は」
心をくすぐるような口調。
それから胸に指を滑られてきて、
「ねぇ、鈴?」
「っ」
「本当に鈴が嫌なのならこれ以上はしないよ。どうする?」
挑発的な口調。
こんなのは卑怯だって思った。
私の体が反応してるのを知ってる。いないはずの千秋さんの声と手を私が求めてるのを知ってる。
千秋さんへの気持ちを知ってるくせに。私よりも先にそのことに気づいたくせに
(千秋さん)
瞳の裏に初めて会った時の千秋さんのことが浮かんで、アイマスクの下から涙が一筋零れた。
「……………て」
「ん?」
「……もっと、して……千秋、さん」
そう、呼んだ。敬語も使わないで、目の前にはいない人のことを呼んだ。
本物の千秋さんの前じゃこんなこと言えない。こんなエッチな子だなんて知られたくない。
でも……、今目の前にはいるのは千秋さんじゃないから……
「気持ちよくしてあげるよ、鈴」
本当に目の前にいる人がどんなふうに笑ったかわかった気がする。
けれど私はそんなものに気づかないふりをして
「ぁああん……」
声を出した。
「ふ……ぁあ……ぁ、千秋……さん。ぁ」
指があそこに触れて、お腹のあたりをくすぐる様に舐められる。
千秋さんを好きなこと、千秋さんに触れられて嬉しいって思ってることを自覚するとさっきまでとは比べ物にならないくらいに快感を感じてる。
「鈴のエッチな顔、可愛いよ。もっと……んっ」
「ふぁ!?」
前と同じようにあそこに口づけられた。女の子一番感じるところ、皮を剥かれ大きくなってしまっているお豆。
クリ……トリス。
最初は舌でつつかれるように、それからねっとりと舐め上げられて、最後に口に含まれて優しく愛撫をされる。
「あぁあ、…ぁ、それ……そ、れぇ……」
「じゅる……ちゅぁ、んぷ。おいしよ、鈴の。私も我慢できなくなっちゃった」
くちゅ。
そのセリフと同時に私のじゃない湿った音。
「ほら、鈴。想像してみて。私、今自分で触ってるんだよ。鈴が気持ちよくなってるところを自分の手で同じように気持ちよくしてるの」
視界がないって怖い。想像できちゃうから、千秋さんがどんなことをしてるかって具体的に頭に浮かんじゃうから。
千秋さんが私の股間に顔を埋めながら、手を伸ばして自分でしてるところ。
(っ〜〜)
そんないけない想像が頭の中を浮かんで、余計に体が火照った。
「千秋さん…あぁ、千秋さん……気持ちいい……いい、よぉ……千秋さぁん」
「んう……っちゅ…、むぅじゅるる…ぁちゅ。私も、だよ鈴。ぁ、ああ…あんぁ」
ピチャピチャと私のあそこから響く音と、クチュクチュと千秋さんから響く音。その淫猥な水音が敏感になった触感と聴覚を刺激する。
「ぁ、ん、ねぇ、鈴……鈴も、自分でしてみてよ」
「え……?」
「胸、弄って見せて」
「っ!」
そんな恥ずかしいことできない。できるわけない。
「鈴の、エッチなところが見たいんだ」
「ぁ……う、ん」
千秋さんが望んだからなのか、それとも……ううん千秋さんに求められたっていうことを言い訳にして私は自分の胸に手を伸ばした。
「ふぁあ! あぁ、ぁん……これ……ちが、う……一人でしたのと、全然……ぁあん」
沈んでいく指の感触と張りつめた乳首が、感じている自分を私にわからせる。
「んぁ……ふふ、自分でしたんだ。したことないって言ってたくせに。あぁ……忘れられなかったんだね。私にされたのが……んっ…あぁ」
「っ…だって……」
「いいよ。エッチな鈴も大好きだ。だから、もっといやらしくしてあげる」
「っあぁっ!」
千秋さんの指が、私の中に入ってくる。口でするのは変わらず一本入った指が私の敏感な場所を何度もこすっていく。
(頭が……まっしろに、なっちゃう)
びりびりと心地いい刺激が体を駆け巡る。
耳からはいやらしい音。
胸を責める私の手は自分のものとは思えないくらいに激しくなってる。
「鈴……鈴…あぁ、んっ。また、見せて……鈴の、イク、ところ……んぁ、私も合わせるから」
「ぁ、っ……ぁあ、千秋さん……だめ、……だめぇ……私……」
「だめ、じゃない。気持ちいい、だよ。ぁ」
その通り、だった。
千秋さんの舌が、指が、私の手が、胸が。
「……う、ん。気持ち、いぃ……イかせて、千秋さんに……イかせて、欲しい。ぁあんっ」
「っ、……それじゃぁ、一緒にいこ、っか」
じゅちゅ。チュ! じゅ、くちゅぁ…じゅぷ……ちゅ。
いろんな音が混ざったエッチな音。
快感になれない私には激しすぎるその感覚に私の体は限界に近づいていって。
「ぁあぁぁっ……あぁっふぁああ! んっ」
「わたし、も……きた、……よぁ…あぁああ、っ」
快感が無意識に腰を浮かせて、千秋さんに愛撫を迫る。
胸を弄る手が自分のものじゃないように本能で動く。
隠すことのできない欲望にあられもない声が上がる。
そして
「あぁあ……ぁあっイっく……!」
気を遣る瞬間が来た。
「ぁっああぁ、っああああ。ちあ、き……さ…あぁっっん」
「す、ずぅ……ぁああ、んく…あぁああ!」
最初は私、それから少し遅れて、千秋さん……蘭先輩が絶頂に達した。
「ぅっぁ……はぁ……ぁああ、ぁ……」
人生で二度目の絶頂に私は激しく息を整えながら、心の中に虚無感と罪悪感を灯す。
「ふふふ……可愛かったわよ。鈴ちゃん」
「っ………」
そしてアイマスクを外された目に満足げな蘭先輩の顔がうつると
(ごめん、なさい……)
涙を流しながら千秋さんに心の中で謝罪をした。