「ん、ぁ……ぁっああ」
夜の闇の中。
「ちゅ……ぢぅぅぅ……ぷちゅ……んぁ」
きしむベッドの上で私たちは肌を重ね合う。
「ぁ、ぁつ……は、ぁ……すず、さん……私……また……っあぁっ」
私の腕の中で淫らに喘ぐ少女。つい数週間前までは罪悪感に満ちたオナニーしか経験したことのなかった女の子が、今は私を求め、私はそれに応えている。
「……いいよ。イっても、まだまだ何回でもイかせてあげるから。我慢しないで、気持ちよくなっていいの」
まだまだ発展途上の体に、手を、指を、唇を、胸を、時には言葉を浴びせ体の奥に眠る快楽を引き出していく。
「は、い……はぃ! あ、ぁあ、っ……ぁあつ」
舌を彼女の口の中で絡ませ、指は女の子の部分を激しく弄っている。
すでにこの日何度目かの絶頂を迎えて、敏感になった冬海ちゃんの体は朱に染まり、瞳は熱情に蕩けている。
(……その目……)
私が変えてしまった少女の艶めかしい瞳に見つめられると背筋が震えてしまう。自分のしてしまったことに。
………それは罪悪感とかそういうもの以上にもっと別の気持ちがある。
「っ、ちゅぁっ…じゅぅぅ……る」
その劣情を冬海ちゃんの体に浴びせ私は彼女を快楽の極致へと持っていく。
「ぁあ、っ………っ……ぁああ、っっ…あ」
「気持ちよかったら気持ちいいって言わなきゃだめよ。そっちの方がよくなれるから」
「ぁ、ぁぁ、は……いぁ……気持ち、いい……ですぅ……鈴さんにしてもうの、すごく……あぁ、っ気持ちい、い……です……ぁあああ! ぁつ」
良くできましたっていう代わりにクリトリスを激しく擦る。
乳首を指でつまみ、首筋に舌を這わせる。
キスをしながらでもいいけど、
「ぁっ、す、ずさ……また、…あぁああっああああっつ!!」
イかせた時の顔を見たいから。
「っ、はぁ……ぁつ」
体を脱力させた冬海ちゃん。
色欲に満ちた瞳を潤ませ、唇からはよだれが垂れている。
とてもだらしない姿。
(……私が、そうさせた)
今絶頂させたっていう意味じゃなくて、ここまで彼女を連れてきたということ。
「……ふふ」
その事実に私は笑みをこぼして舌でよだれを舐めとるとそのまま再び唇を奪った。
「っ……あ、は。可愛いかったよ、冬海ちゃん」
そして、私の可愛い可愛い彼女に笑顔でそう告げるのだった。
満たされるというのはどういうことだろうか。
誰かに必要とされることだろうか。
誰かを恋い焦がれることだろうか。
誰かと心を通じ合わせることだろうか。
……好きな人と結ばれることだろうか。
答えは私の中にはない。
私がわかるのは、体が満たされても心が連動することはないということ。
蘭先輩や、冬海ちゃんとエッチをして気持ちよくなれたとしても心は乾いたまま。
それは間違いない。
けれど、同時に矛盾を感じている。
蘭先輩にされるがままだった時には感じていなかった、体の快楽とはまた別種の快感。
私は今、それを感じることで満たされない心をごまかしている。
冬海ちゃんが私の腕の中で、もがいていく姿。いけないこととわかりながら、私に逆らえずになすがままになる姿に私は倒錯的な想いを抱いている。
思えば、その兆しはあったかもしれない。
いつだったか、蘭先輩と千秋さんと三人でした時、あの蘭先輩を支配していると錯覚するような感覚を受けた。
それは多分、人の道に反している快感。普通の人が感じることはないだろうし、考えることすらはばかれるようなこと。
私は今そのことにわずかな期待を抱いている。それは決して心の餓えを満たすものじゃないなんてわかっている。
そんなことをしたところで千秋さんが私のものになるわけじゃないことも、千秋さんが私を好いてくれることがないこともわかっている。
……むしろ、嫌われても仕方のないこと。
でも……どうでもいい。
どうせ、このまま蘭先輩のものでいても千秋さんが私を見てくれることはないんだから。
どうせ好きな人が手に入るわけじゃないのなら………せめて、この乾きだけでも満たせばいい。
冬海ちゃんを変えたことに自信を持つ私はいつしかそんなことを考えるようになっていた。
私は爛れた生活を送っているように見えるかもしれないけど、それは事実の一端で私のすべてを現したことじゃない。
普通に学校にも通えば、授業も受ける、友達とおしゃべりをし、宿題も予習、復習もする。
それは私に限らず蘭先輩や、千秋さん、冬海ちゃんも同じで例えば次の日が休みの夜にもふとなんでもない時間ができる。
「ここ、いい?」
今日はおとなしく早めに寝ようかと考えながら寮の食堂で夕飯を取っていると、ふと声をかけられた。
「はい、どうぞ。瑞奈さん」
いわゆるゆるふわな雰囲気を感じさせる蘭先輩のルームメイトは「じゃあ、遠慮なく」と隣に座る。
「何かご用でしょうか?」
「またまたわかってるくせに」
瑞奈さんは茶化したように言う。けれど、その瞳の奥には情欲が宿っている。わかる人にしかわからない肉欲を知った淀み。
「私鈴ちゃんのこと気に入っちゃったの。だからまた可愛がってあげたいなぁって」
体を寄せながら耳元で囁く。
少し前までならそれだけその耳まで真っ赤にしてしまっていたけど今は、この人は甘い香りがするな程度しか思わない。
(………この人も私にそういうのを求めてるのね)
蘭先輩と一緒。後輩だからか、それとも私がなれていなく不得手に思っているからか。それとも……
(……私と同じなのかしら)
感じてはいけない快感を得ているのかもしれない。
「だめ? 蘭は今日は別のところ行くから鈴ちゃんは空いてるかなって思ってたんだけど、予定があるのなら無理にはいいよ」
こういう言い方をするあたり、自分の行為がどんなものかあまり重く考えていないのかもしれない。
(………なら)
ある考えをよぎらせ、
「いいですよ。部屋、行きますね」
私は一瞬だけ冬海ちゃんにしているときのような笑みをこぼしていた。