千秋さんとのキスは久しぶり。
「む……ちゅ…じゅぴ……ぢゅちゅんぁ…あっ」
手と手を絡めて体を寄せ千秋さんの引き締まった肌を感じ、唇を合わせどちらともなく舌を伸ばしあって、深い口づけを交わす。
(千秋さんとの……キス)
二人きりでするのは初めて。けれど、これは決して望んでいた形ではない。
それどころか、これは私達の関係の重大な分岐点だったかもしれない。
私はそれを心の中ではわかっていたはずでも、今は
「っ……」
ぐっと千秋さんの方に体重をかけてそのまま押し倒した。
「千秋さん」
「鈴……」
千秋さんと視線が合う。これまで私が見てきた千秋さんはどこか超然としていて、少なくても二人きりの時には見せてくれなかった姿。
年相応の少女の顔。
恋に破れるどころか、まともに戦うことすらできずに想いが叶わないことを思い知らされた憐れな少女。
その悲痛な顔も潤んだ瞳もどこか扇情的で、なによりも私の劣情を刺激した。
「……………」
それでも数瞬私の体が動かなかった。今ならまだ止められる気がしたから。止まるべきな気がしたから。
でも
「鈴………来て。忘れ……させてよ」
なぜかスローモーションのように千秋さんの唇が動くのがはっきりと見えて
「………わかったわ」
私は体を重ねていき、再び唇を奪った。
「ぁん、じゅりゅ……ちゅ、チュ…うぅ……む」
今度は私主導のキス。千秋さんの唇を舐めてから舌を進ませ、熱い口腔を感じつつ千秋さんの舌を絡ませて行く。
千秋さんの小さな舌が私に合わせるように動き、だんだんキスが激しくなって互いの唾液が口の周りを汚していく。
「んっ…ぁっはぁ……あ」
キスをしながら私は服の下に手を潜り込ませるとめくりあげて胸を露出させた。
「はぁ……千秋さん……感じて。私のことを」
キスを終えるとホックをはずしてブラを取り去る。
「可愛い……」
「っ……」
少し小ぶりな千秋さんの乳房を両手でつかみ外側から中に向かった柔肉を寄せる。
「っ、はずかしい、こと、しないでよ……」
口ではそんな風に言うけれど抵抗することもなく私が胸にある手に力を込めると千秋さんはくぐもった声を上げる。
「ぁ…ふぁ…っ……んぁ」
反応は鈍いけれど決して感じていないわけではないことは体が教えてくれる。
「固くなってきたわよ、千秋さん」
「いちいち、言わないでよ」
蘭先輩とどれだけこんなことをしたかはわからないだろうし、私とも幾度となくしている。けれどこの時の千秋さんはまるで初めての少女かのように照れた様子を見せた。
………初めて、かもしれない。少なくても私と本当の意味でするのは初めて。
千秋さんがそのことを特別に感じてくれるのならそれは多分嬉しいことで……私はそれに応えなければいけないの。
「あむ、ちゅ…あじゅ…れろ、ぴちゅぅ」
両手で胸を揉みし抱きながら同時にさくらんぼのように可愛い突起に吸い付き舌で転がす。
グミのような弾力で吸い、弄るたび芯が入ったのように固くなっていくのが私の興奮を煽りもう片方の乳首も指を這わせていく。
「す、ず。あ、はぁ、んっ、くぁ」
「っ、ぱぁ。千秋さん、気持ちいい?」
「う、ん……いいよ。上手、だよね鈴は」
「……ありがとう」
褒め言葉なのかよくわからない。少なくても望んでこうなったわけじゃない私としては。
でも、千秋さんが感じてくれていることは嬉しく私は体をずらしながら手を下半身に滑らせていった。
「っ。………」
「濡れてる」
「……さっきからいじわるだね。鈴は」
「かもしれないわね」
体だけでなく心を同時に揺さぶる。その方が感じるって知ってしまったから。
「……意地悪なのはいいけど、せめて服はちゃんと脱がして欲しいかな。皺になっちゃうしさ」
「……そうね」
こんな会話ができるのがどこか嬉しくも感じて私は千秋さんの服を取り去ると、同時に私も服を脱いでベッドの下に落とす。
十一月で暖房もかけていないからかなり寒いはずだけれど、そんなことは気にならず私はベッドに横たわる千秋さんの裸体を見つめた。
少し小ぶりな胸に細い腰と程よく引き締まった体はどこか芸術的な魅力もある。
普通の人なら手を伸ばしてしまうのがためらわれるほどだけれど、この体にはあの人の指紋のついていない箇所なんてきっとない。
(……………)
悔しいとは思う。でも純粋にそれだけを思うには私の心は複雑すぎて……
「ちゅ」
鎖骨に口づけをした。
重ねた体から、生の熱が伝わり心地いい。肌と肌が触れ合い吸い付くようなこの感覚がたまらなく好き。
「ひゃ!」
って先に声をあげさせられたのは私の方。
千秋さんの指が私の筋をなぞってその不意打ちの感覚に声が出てしまった。
「鈴にいじめられてばっかりじゃやだし、私もするから」
少し余裕の戻った千秋さんの表情。それがなぜか嬉しくて私も同じ場所に手を当てた。
「……えぇ。一緒にお願い」
熱く濡れた秘部に中指と人差し指を当てる。こすったり、押したりするとすぐに中からぬるぬるとした雫が指に絡んでいく。
「んっあ……ふっん……あ」
「あぁっ……んつぁあ」
漏れる声は小さいけれど体を駆け抜けるたしかな快感に体が熱くなり、汗で全身が湿っていく。
「千秋さん、いれてもいい?」
「うん。私もするから」
荒い息を吐きながらうっとりと見つめあい
「っん」
互いに指を突き入れた。
「千秋さんの中、すごい熱い。ぁっあっ、ん」
「鈴のだってあたしの指強く、締め付けてるよ…ぁぅ……ふぁ」
指が千秋さんの膣内に飲み込まれるような感覚と千秋さんの指がじゅぷじゅぷと音を立てながら私の中をかき乱していく。
とろけるようなそんな快感が走って頭がぽーっとする。
(いつもより感じてる)
「はぁあ、気持ちいい……気持ちいいわ、千秋さん」
曲がりなりにも好きな人とエッチをしているのだから当たり前なのかもしれない。
「うん、私も鈴……ぅぁ」
私たちは互いに複雑なものを抱えている。一歩間違えば、ううん間違えたからこそ今こうして肌を重ねている。
でも、そんなのと関係なく一度火のついた体がさらなる刺激を求めた。
「っん、あっ! 胸……、ふ、ぁ、乳首、擦れて……んんっ!」
「ぅあ、鈴のって柔らかいよね、よね…ぁあん」
ベッドの上で胸を合わせながら、指を深く相手の中へ突き入れる。
「あぁああ、っああっ、あぁ」
「ふ、ぁああっはああ、ぁん」
「千秋さん……千秋さん……ぁあはう」
「鈴あぁぁ……ふぁ、つ、これ、すごい、ね」
「う、……ん……すごく、気持ち、いぁ……っああ」
くにゅくにゅと胸の形が変わるほど体をこすり合わせるたびに、胸からじんじんと快感が伝わり、ぐしゅぐしゅと互いの秘所から溢れだした蜜でびしょびしょの指を相手をかき回す。
「もっ、っと……もっとして、あっ、気持ちい……もっと……千秋さん……もっと」
理性は徐々に消し飛んでいき、千秋さんとお互いを感じあうことしか考えられなくなっていく。
「……ぁ、鈴……鈴ぅ……ぁあっ、これ、すご……こんなになる、なんて…あぁあっ」
千秋さんも私と同じなのか、涙を浮かべながら陶然とした表情でそう言って、後は言葉はいらない。
お互いが一つになったかのような充足感に満たされながら、後は考えてではなく本能の赴くままに相手を高め、相手を高めることが自分の快感につながり
「ふぁ……あっっすず! ……ぁああっ」
「ち、あきさん…あぁあっっああ」
いつもの瞬間がクる。頭が焼け焦げ体がどこかに飛んでってしまうかのような激しい絶頂感。
いつもと同じで、いつもとは違う。
初めて千秋さんと一緒に迎えるその瞬間、それが私の感度をより敏感にしていって
「イ……っく……あぁああっ」
先に私が
「っ……鈴のすごい、締め付け……っうあぁ、私も、も、う……指、もっと……動かして……んぁ! あぁああぅっく、っああ」
気を遣ってしまいそうなほどの快感の中、夢中で千秋さんの中をかき回すと
「あぁあああっ………ふあぁああ!」
数秒遅れて千秋さんも私と同じ高みを迎えた。
「ふ、あ……はぁ……ぁ、は……」
「っ…んぅ……」
気だるい疲労。夢から覚めた後のようなそんな寂しさを感じる時間。
「……………」
何を言っていいのかわからなくて困ったようなに千秋さんを見つめていると。
「指、まだ締め付けてるよ」
「っ……」
そのままにされてた千秋さんの指をキュウキュウと締め付けているのを自分でも自覚して多少はおちついていた体の熱が再び燃え上がる。
「ねぇ……鈴」
私を見つめる千秋さんの瞳には涙とそれ以上の情欲が灯っているのを見て
(そう、だった……)
私はしなければならないことを思い出した。今は私が千秋さんをどう思うかではなく
「……もっと、しよ」
千秋さんに応えることを何よりもしなくてはいけないのだということを。
それがおそらく千秋さんとの決定的な分岐であることを悟っても私は
「………えぇ。一晩中愛してあげる」
千秋さんの応えることを決めた。
6−5/