「……ふぅむ」
今日も今日とてベッドの上で考え事。
今日はゆめはいなくているのはお風呂上りの美咲とあたしのみ。
美咲はベッドに座りながら髪を乾かしていて、濡れた髪が色っぽい。
(って、んなことに見惚れている場合じゃなくて)
美咲はどれだけ見てても飽きないけど、今考えるべきはこっちの恋人のことじゃなくて小っちゃいほうの恋人ちゃんのこと。
もっと正確に言うなら小っちゃいほうの恋人ちゃんのお姉さんのこと。
あの人はなんだかんだで大人だって思う。少なくても普段あたしや美咲が見ているような姿が全てじゃない。
あの人はあの人なりにゆめのことを、ゆめの将来までも考えてる人だって思う。
ゆめのことを溺愛しているのは間違いないけどそれだけではなくて、ちゃんと姉としての役目も果たそうとしてる。
あたしはそのことでそれなりに期待をかけられててそれに応えなきゃいけない。
(……とはいえ……)
「ふむ……」
どうするべきかは今はまだ見えなくて一つ唸り声をあげる。
「あーやね」
そんなあたしを甘く呼ぶもう一人の恋人。
「ちょ、なに」
呼ぶだけじゃなくて近づいてきた美咲は、あたしを後ろから抱きしめてくる。
お風呂で火照った体と、甘いシャンプーの匂いが動悸をもたらす。
「キス」
「は?」
「キスしなさいよ」
強気な表情に有無を言わせない迫力を持つ瞳。
「ん……」
羞恥はあっても断る理由はなくあたしは美咲に軽く口づけると美咲は今度は両腕を回して体重をかけてくる。
「ゆめのこと考えてんでしょ」
「はずれ。ゆめじゃなくて、ひかりさん」
「同じよ。ゆめのためにひかりさんのことを考えてるんでしょう」
「まぁ、それは……」
その通り。こういう言い方するとろくでもない人間に思われるかもしれないけど、あたしにとって大切なのはやっぱりひかりさんじゃなくてゆめ。
「そのこと自体は咎めないわ。事情は知らないけれど、ひかりさんも思うところがあってあんたに何か話してるんでしょ。なら、応えてあげなさいよ。ゆめのためにもね」
「それはそうなんだけどさ、どうするべきかって思ってね。何をすることがあの二人のためなのか難しいよ」
「そんなのは自分で考えなさいな。あんたが自分で悩んで出した答えならそれで十分だって思うわよ。少なくてもゆめにとってはね」
ぎゅっと抱きしめられながら前後に体を揺さぶって美咲は厳しいような暖かいような言葉をくれる。
多分、相談をしたところで美咲は答えをくれない。
それは美咲が言うようにあたしが答えを出さなきゃいけないってことでもあるんだろうけど、多分一番の理由は抵抗だ。
アドバイスなんてしたくないんだろうね。
そういう美咲の気持ちはわかるつもり。
(ま、そんなこといったら多分怒られるけど)
「ただし……」
あたしを揺さぶることをやめて再び体重をかけてきた美咲が不敵に笑う。
「私をないがしろにしないっていうのは最低条件よ」
振り返ってその顔を見つめるあたしは美咲の望みを察して
「……はいはい」
軽く返事をしてから
「んっ……」
今日二度目のキスと共に美咲をベッドに押し倒していった。