学校から帰ってくると、私にはやることがある。

 それは別に特別なことじゃなくて、洗濯物を取り込んでちゃんとたたんでおくこと。両親が帰ってくるのが夕飯くらいになるから家事はお姉ちゃんたちと一緒にすることになってる。

 でも、美奈お姉ちゃんは部活動で遅くなることも多いから大体は私と紗奈お姉ちゃんがすることが多い。

 今日も、友達とちょっと寄り道してから帰ってきた私は洗濯物を取り込んでお母さんのベッドの上でたたんでいた。

「あ、……お姉ちゃんまた新しい下着買ったんだ」

 美奈お姉ちゃんのブラジャーを手にとって小さくつぶやく。

 最近、胸が苦しいって言ってたけど、新しいサイズにしたみたい。

「…………」

 それにしても、お姉ちゃんたちの下着って……私のと全然違う。私なんてまだ全然子供のばっかりでお姉ちゃんたちみたいななんていうのかな、色っぽいのなんて一つもない。

(……そもそもブラジャーだってしてないけど)

「…………」

 私は美奈お姉ちゃんのエメラルドグリーンのブラジャーを中々手放さないで見つめてみる。

(……いつか、私もこんなのが似合うよりになるのかな)

 何カップとか全然わからないけど、とてもこんなのが似合うようになるなんて想像できない。

「……はぁ」

 いいや、変なこと考えてても仕方ないし早く終わらせちゃおう。

 私はそう思ってブラジャーから手を離すと他のを終わらせて、お姉ちゃんたちの洗濯物をお姉ちゃんたちの部屋に持っていった。

「あ」

 タンスに戻してる途中でまたさっきのブラジャーを落としちゃった。

 それと拾う過程であるものを見つめる。

 タンスの横にあるおっきな姿身の鏡

「……………ちょっと、試しにしてみるだけ、だから」

 なんとなく好奇心にそそられた私は言い訳するみたいにつぶやくと、お姉ちゃんブラジャーを服の上から

「あ、あれ……? ん、ん〜」

 一応、お姉ちゃんたちがするみたい胸にあてて形だけは出来たんだけど、背中のホックがうまくできない。

 初めてだからっていうのもあるんだろうけど

 そもそも、背中なんて見えないんだからこんなのできないよ! 

 なんて、できない愚痴を言って私はブラジャーをはずそうと

「はい。これで、いいわよ」

 したところでホックをかけられた。

「っ!!?? お、お姉ちゃん!!?

「ただいま、悠里」

 驚いて振り返ってみると、いつのまにか帰っていた紗奈お姉ちゃんが私を楽しそうな顔で見ていた。

「ふふふ。悠里〜。何してるのかな〜?」

「あ、あのね!? これは、ね……えっと」

「それ、美奈のよね。どうして悠里はそんなのしてるの?」

「……う、あ」

 ど、どうしよう〜。

 自分でもみるみる顔が赤くなっていくのがわかる。この前国語でならったけど、こういうのを顔から火が出そうっていうんだよね。じゃなくて、

「悠里にこんなの必要かな〜」

「みゃ!?

 紗奈お姉ちゃんは私の正面にまわってすかすかなブラジャーの上から私の胸をつついてきた。

「ほら、こんなぶかぶかなのに」

「や、やめてよ〜。んっ……ふぁ、……くすぐったいってば〜」

「私のだったらいつでもつけていいのに。悠里ってば、美奈のほうがいいの?」

「そ、そういうことじゃないもん」

「でも、美奈が知ったらどう思うかしらね。まぁ、別に怒ったりはしないだろうけど」

「ぅぅ〜」

 言うとおり怒ったりはしないって思うけど、そんなの関係なく恥ずかしいよ〜。

「お、お願い。美奈お姉ちゃんには言わないで」

 私は、必死になってお姉ちゃんに訴えかけた。

「ッ!!

 お姉ちゃんは何でか、驚いたような顔して、

「ゆ、悠里、それをもう一回……ううん、ちょっと待って」

「?」

 急にあわてたかと思うと私のブラジャーをはずして今度は机の上から、何かを持ってきた。

 目薬、かな?

「ちょ〜っと、動かないでね」

「え?」

 上を向かされて、目を開かされて……

「きゃ!

 その上に目薬を垂らされた。

「な、なにするの……っ!?

 両目に目薬をさされて、目から雫が零れ落ちる。

「も、もう〜、なんで目薬なんかするの」

「ね、悠里。それでさっきのもう一回言って」

「え?」

「美奈に言わないでって」

「えっ、と……」

「あ、そうだ。ついでに、こう胸の前で手を組んで上目遣いにしてくれたら絶対黙っててあげる」

「こ、こう?」

 よくわからないけど、私は言われたまま胸の前で手を組んで上目遣いにお姉ちゃんを見つめた。

「っ〜〜!! そ、そう。おっけー」

 おねえちゃんは大げさに体を震わせて、すごく嬉しそうな顔をしてる。

「お願い、美奈お姉ちゃんには、言わないで。約束だよ」

「っ〜〜。押し倒したい……」

「え?」

「う、ううん。何でもない。大丈夫黙っててあげる」

「ありがとうお姉ちゃん」

 お姉ちゃんはちょっと変わってるけど、約束を破ったりはしないから私は安心して笑顔になる。

「っ〜。悠里〜〜〜」

「ひゃ!!?

 その束の間紗奈お姉ちゃんはいきなり私を抱きしめてきた。

 私はいつもみたいにむぎゅぅぅってされながら、紗奈お姉ちゃんはいつも変なことするなぁって思うのだった。

 

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