「だから、今日悠里とは私が一緒に寝るの。あんたは出て行きなさいよ。ねぇ、悠里?」
「え、えっと〜」
「なんで姉さんがそんなこと決めるの。悠里ちゃんは今日私と一緒に寝るの。ね、悠里ちゃん?」
「あ、あの……」
お風呂も入って、紗奈お姉ちゃんが作ってくれたお夕飯を食べて、宿題したりおねえちゃんとお話しなんかして後は寝るだけになった頃。
私はベッドの上で、大好きな二人のお姉ちゃんに片方ずつ腕をとられていた。
「どうせあんたは朝悠里のところに忍び込んでたんでしょ。なら、もういいじゃない。夜の悠里は私のもの」
「姉さんこそ、どうせ起こしに来た悠里ちゃんをベッドに連れ込んだんでしょ。そんな乱暴な姉さんに悠里ちゃんを預けらんない」
お姉ちゃんたちは普段は普通に仲がいいんだけど、私のことになると少し仲が悪くなる。私はお姉ちゃんたちのこと大好きだから二人にも仲良くしてもらいたいのに。
(もぅ〜、お姉ちゃんたちは何で喧嘩なんてするんだろ?)
「大体今日あんたお風呂で悠里に何したのよ。悠里ってば、ゆでだこみたいに真っ赤上せちゃって」
「悠里ちゃんが姉さんにはさせてあげないこと。ね、悠里ちゃん」
「え、と……」
うぅぅ、お姉ちゃんが無理矢理したくせに〜。けど、ここで言うと紗奈お姉ちゃんだけに味方するみたいになっちゃうし……あ、でも、否定しないとまるで私が美奈お姉ちゃんのほうが好きみたいに思われちゃうの?
「どうせ悠里がやだって言っても聞かないで無理矢理したんでしょ」
「違う。悠里ちゃんとちゃんと同意の上でよ」
「はいはい。ま、いいわよ。悠里とは二人だけの秘密があるものね」
「え……」
そ、それって、昼間のブラジャーのこと、だよね?
紗奈お姉ちゃんが約束を破るわけないってわかってるけど、さすがに血の気が引いちゃう。
……ここだけでの話、昼間のことだけじゃなくてどっちのお姉ちゃんとも恥ずかしくて知られたくないことは結構あるんだけど……
そんなのいえないよね。
色々ややこしくなっちゃいそうだし。
「そっちこそ。何勝手なこといってんの。悠里ちゃんがあたしに隠すようなことあるわけないじゃない」
「ま、好きに思っておけば」
というか、お姉ちゃんたちは話し合いするのはいいんだけど。
「とにかく悠里から手を離しなさいよ」
グイ、
「そっちこそ」
グイ、
私の手を離してよ〜〜。お姉ちゃんたちが話すたびにそっちに引っ張られて目が回っちゃう。
「離しなさいっての!」
「きゃ!?」
紗奈お姉ちゃんは今までより一番強く引いてきて私は紗奈お姉ちゃんの胸にぶつかちゃった。
お風呂上りの紗奈お姉ちゃんはオレンジみたいな甘くていい匂い。
「姉さんこそ!」
今度は美奈お姉ちゃんが引っ張って、美奈お姉ちゃんの体に引き込まれた。
美奈お姉ちゃんはお花みたいな心がふんわりしてくるような匂い。
紗奈お姉ちゃんの匂いも、美奈お姉ちゃんの匂いも大好きで抱きしめられるのももちろん好きなんだけど……
「もぅ〜〜〜。お姉ちゃん!」
二人の間で行ったりきたりしてた私はちょっと頭にきて、しかるような声をだした。
「なに悠里?」
「どうしたの、悠里ちゃん?」
ピタってお姉ちゃんたちの引っ張る手が止まる。
「喧嘩しちゃだめっていつも言ってるでしょ。私はお姉ちゃんたちのこと大好きなんだから、喧嘩なんかされたら悲しいの。あんまり喧嘩するとお姉ちゃんたちのこと嫌いになっちゃうよ」
『う……』
二人を交互に見ると二人ともちょっとしゅんってなった。
もちろん、本気で嫌いになんかなるわけはない。でも、こういえばお姉ちゃんたちは言うことを聞いてくれるってわかってる。
「ごめん、悠里」
「悠里ちゃん、ごめんなさい」
ほら。
「今日は三人で一緒に寝よ。それならいいよね?」
「わかった。悠里がそうしたいいんだったらそうする。いいわよね美奈」
「悠里ちゃんの頼みなら聞かないわけないよ」
「えへへ、お姉ちゃん。大好き」
とりあえず丸く収まって安心した私は笑顔になった。
『っ〜〜』
「悠里!」
「悠里ちゃん!」
けど、安心したところにお姉ちゃんたちは左右から私のことを抱きしめてきて私はまた顔を真っ赤にする。
こうして私は今日も幸せだったけど、大好きなお姉ちゃん二人に困らせられちゃう一日が終わっていく。
明日も、明後日も困らせられちゃうのかもしれないけどお姉ちゃんが大好きな私はやっぱりこんな日々を幸せに思うのだった。