「……はぁ」
そして、また同じことを繰り返している。
深夜に彩音のベッドに忍び込んでいた。
「んー……くぅ」
無防備な姿で眠る彩音の隣に寝そべって彩音を見つめている。
「……いつからこんなに弱くなったのかしら」
彩音を好きなのはずっと昔、物心ついたころからでその間も不安に思ったりも、不満に思ったりもしてきたけど、彩音の気持ちを疑うみたいなことはなかったのに。
「……疑ってなんかないけど」
心で思ったことを声に出して訂正する。
彩音が私を好きじゃないとか、ゆめの方が好きだとかそんなことは思っていない。
思ってないけど、
(もし……万が一)
本当に、万が一、億が一……彩音が私よりもゆめの方が好きだなんて言ったら……
「っ!」
振り払うように頭を振る。
そんなこと絶対にありえない。そんなのはわかってる。
でも、そう思うこと自体嫌だし、思える理由があるっていうのも嫌。
私よりもゆめに触れることが多い現実。好きなところをすらすらと述べる事実。何かとゆめを優先する実態。
それに対する反論もできるはずだけど……
(……本当に、万が、一……)
彩音の一番が……私じゃなくなるなんて、ことが……
「あ、あれ……?」
急に目の奥が熱くなった。
(嘘……泣いて、る……?)
こんな、ことで? 絶対にありえない妄想をしてしまっただけ、で?
ううん、今考えたことは私にとってはこの世のすべてよりも大切なことだけど、でもそういうことじゃなくて……
「なん、なのよ……」
自分の気持ちがうまく制御できていない。
ありえるかもしれない可能性に心が収まりを見せてくれない。
「…………彩音……もっと私を、見てよ……」
無意識に彩音の手を取る。
「……もっと、私のこと好きって言ってよ」
震える声でそう言って握って手に力を込める。
嫌。彩音の一番じゃないなんて絶対に嫌。そんなこと耐えられない。
だって、ずっと私は彩音の一番だった。
ずっと私が誰よりも側にいた。中学までは親友として、今は恋人として私は生まれた時からずっと彩音の隣にいた。
【ここ】は私だけの場所なの。他の誰にも絶対に渡せない私だけがいていい場所なの。
今までも、これからも私だけがいていい場所。
だから……
「……彩音……」
気持ちが溢れすぎて言葉にならない。代わりに気持ちを押し付けるよう取った彩音の腕をぎゅっと抱きしめた。
「……ん……んん……みさ、き……?」
それがずっと彩音の前で隠していた弱さを見せるきっかけとなる。