渚が手を握っている。

 暖かな手に力を込めて私の手を握っている。

 渚が目を閉じている。

 小さくて愛らしい瞳を閉じて、唇を私に差し出すようにして目を閉じている。

 どうすればいいの?

 わからない。

 渚が言ったこと、ちゃんと聞いていたはずなのに。

 わからない。

(貴女……貴女は……?)

 

 私は水谷渚。貴女を想う、貴女が想う、貴女の恋人です

 

 わからない。

 今私は何をすればいいのか。

 何をしていいのか。

 わからない。

(でも……)

 私は渚の手を振りほどく。

 振りほどいて指を絡めていく。握られていた手と、床の上で重ねた手に。

 私も目を閉じる。

 闇の中、繋いだ手のぬくもりの方へ私は近づいていく。

 想いを抱えて。

 言葉じゃない方法で渚へと届けるために。

 そして………

 

10-5/10-7

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