「ん……ぅ……うん……?」
頭が、痛い
(あれ……? 朝?)
鈍痛のする中目を開けると窓から太陽の光が差し込んできているのが見える。
(? 昨日、いつ寝たっけ……?)
全然記憶にない。
「んー……」
思い出そうとしても、頭が痛むだけで一向に心当たりがない。
思い出せないものは仕方ないと私はリビングに向かうと
「…………おはようございます」
エプロン姿の渚が少し間をおいてから挨拶をしてきた。
「お、おはよう。渚」
「…………すぐ、朝ごはんできますから」
私が挨拶を返すと渚は一瞥した私から背を向ける。
「あ、うん」
(…………機嫌、悪い?)
そういう雰囲気がある。それは大きな変化ではないけど、私にはわかるほどの変化。
もう二年近く、寮の時から合わせれば四年一緒に住んでいるんだからそのくらいはわかってみせるけど……
なんでかまでわかるほど万能じゃないのよ。
「渚、手伝うわ」
「………結構です。せつなさんは顔でも洗って来てください」
「……え、えぇ」
会話から渚の不機嫌の原因を探ろうとしたけど、会話にすらならずに私は渚に言われるままでに顔を洗って、朝食の準備が整うのを待った。
サラダに、卵焼き、白いご飯と、お味噌汁。
そんな定番する朝食を取りながら、渚と会話のきっかけを探そうとするけどそのことごとくを一言で打ち切られてしまい、私は更なる混乱をきたす。
(と、とにかく、何か話さなきゃ)
ここまでにわかったのは渚が想像以上にご機嫌斜めだということくらい。
「あ、そ、そうだ。今日は一緒に買い物でも行かない?」
「………結構です。今日は図書館にでも行こうかと思っているので」
「あ、なら、私も一緒に行くわ。読みたい本もあるし」
「…………なら、私は部屋にいさせてもらいます」
「え?」
「一人になりたいので。せつなさんはどうぞゆっくり本を読みに行ってください」
「あ、あの……渚……? 何、怒ってるの?」
聞いてはいけないかと思って直接聞かなかったけれど、渚が思った以上に怒っていることに狼狽えてつい素直な言葉が出てしまった。
「…………………」
すると渚は冷たい瞳で私を見返してくる。
「あ、あの……?」
「やっぱり覚えていない、ということでいいんでしょうか」
「え……えと………?」
「なら、覚えていないということに対して怒っているとだけ言っておきます」
「っ……」
冷静に、冷徹に言い放つ渚に心胆を寒からしめる私だった。