「んっ……ふ、ぁ……んっぁ」

 私、何してるんだろう。

 慣れない手つきで体をまさぐりながら頭の中の冷静な部分がそれを考えていた。

 せつなさんのベッドの上で、昨日のせつなさんのぬくもりや頭に浮かぶ様々な姿、シーツに残るせつなさんの香りを感じながら自らを慰めている。

 いや

(オナニー……してるんだ)

「っ。ふ、ぁ……っ」

 意味は違わないはずなのにそれを心で想うと急に恥ずかしくなって体がビクっと震えた。

 ベッドの上で服をずらし、胸を露出させて半裸姿で胸に手を当てている。

 どんなふうにすればいいかなんてなんとなくでしかわからないけれど、私は初めての欲求に従いながら自らの胸に刺激を与えていた。

「んっ、…ふ……ぁ」

 ほんのりとした胸のふくらみに指を沈みこませくにくにと揉みしだくとくぐもった声が漏れる。

 気持ちいいっていう感覚はわからないけれど、胸から身体へと広がる未知の感覚は私を捕らえて離さない。

 手のひらで覆いながら指に力を込め、じんじんと体に熱さが伝播していって吐息が自然と荒くなっていく。

「ふぅ……ん、せつな、さん……ぁ」

 無意識にその名前を読ぶと胸を責める手の動きが激しくなり、その中で私は変化に気づく。

「あ、む、ね……」

 胸の先端が固さを増し存在と、私が【感じて】いるということを主張していた。

 生理現象としてそういうことを起きることを知ってはいても、実感をすると自慰をしているんだということがより一層自覚させられて羞恥に体が焼かれてしまう。

 けれど、今はその恥ずかしさよりも

「せつなさん……ぅ、せつなさん。はぁ、っせつな、さん」

 好きな人の名前を呼び続けながらち、くびの周辺に刺激を集中させていく。

 少し怖さもあるけれど乳輪に二本の指をあてながら上下や左右にこすったりすると、

「っあ、っぅ、……っふああ」

 これまで以上の強い快感に私は高い声をあげ、ついで先端へと指を伸ばす。

「こんな感じ、なんだ」

 自分の身体のことなのに初めて触る気がして、その意外に固く感じる感触にそんな感想を抱くけれど、今はそれを考えるよりもどう触るのかということに意識がいってしまう。

「つまんだり、とか、軽くたたいてみたり、とか、よね」

 陽菜だったか、どこからか仕入れた知識かわからないけれど頭に浮かんだ方法を試す。

「ふあ、っ、これ………ん」

 つまんで少しひねったり、

「これ、……気持ち、い」

 指でノックするように叩いたり、先端に当てながらぐりぐりとこね回したり。

 さっきまでは明確にそうは思えなかったけれど、今ははっきりと気持ちいいと思えて、夢中になって胸を責めた。

「ふあぁ、せつなさん……っあ、ぁ……」

 ぎゅっと閉じた瞳の裏にせつなさんの姿を思い浮かべると快感が身体を貫いていく。

「っん、くぅ……ああ、ぁつ」

(私、せつなさんのベッドでこんな……)

 出したことのないような声を上げて、してはいけないことをしている。

 これはとてもいけないこと、なのに。

 頭の中に浮かんでくるせつなさんと、ベッドにある香りが私を惑わせて行為をやめさせてくれない。

「む、ね……気持ちぃぃ、です……せつな、さん」

 妄想の中でせつなさんのことを都合よく思い浮かべ、その背徳感を持ちながらも私は胸への責めを止められずにいると

「っ……っ!」

 胸からの快感が次第に体の奥にたまっていくような感じがして、腰が砕けるような脱力感に襲われる。

「……ぬ、れてる……」

 ショーツが湿り気を帯びていることに気づいた私。

 数分前だったらとても手を伸ばすなんて恥ずかしいし、それ以上に私がこれまで培ってきた倫理観がそれを許してはくれなかった。

 でも、今は。知ってしまっている今は。

「ん、っく……」

 左手を胸当てたままゆっくりと履いていたスカートを下ろし、ショーツのクロッチ部分に触れた。

「ぬるぬるってしてる」

 再び知識だけでしか知らなかった情報を実感し、私はなぜかそのことに余計に興奮してしまう。

「触ったり、するのよね」

 確認するように呟いてから当てた手をぐにぐにと動かしてみる。

「んっ……あ」

 ショーツの上から触るとぐちゅぐちゅと湿っぽい音は立てるけれど、快感ということよりも濡れた布と肌が擦れ合う感覚はむしろ好きではなくて何がいいのかよくわからなくなる。

(これなら胸の方が気持ちいい、けれど)

 このあたりの快感を感じる仕組みというのはなんとなくでしか理解できていない。

 陽菜に読まされた小説ではあまり詳しくは描写されていなく、どうすればいいのかわからない。

(中に、指を入れたりするの、よね)

 自分の身体とはいえ怖い、けれど。高まっていた快感が少し冷めてしまっていた私は冷静にそれを思って、ショーツを脱ぎ捨てる。

 上半身の服はずれながらも身に着けたまま下半身だけ何も身に着けていないというのはなんだか余計に恥ずかしいけれど、ここまで来たらそれに構っている余裕もなく私は恐る恐る指を女の子の部分へと進ませた。

「んっ、っ!」

 人差し指を当てて、力を込めると暖かな肉の感触に包まれ吸い込まれていく。

(ちょっと、痛い)

 少し指を入れただけなのに痛みははっきりと感じる。

「は、ぁ……はぁ」

 指が締め付けられる中、私は少しずつ指を前後へと動かず。

「ぁ……あ、これ、なら……」

 痛みはまだ少し感じるけれど思ったよりは滑らかに指が動いて次第にじゅぷじゅぷと音を立てて動くようになると、

「気持ちいい、かも。ふぁあ、ぁ」

 浅いところを何度も前後させていくと少しずつ痛みから無ず痒さに変わり、ついでさっき胸を触っていたときのような快感を感じてきた。

「んぁ、あ。っ……ぁっあ、、ぁあ。胸、も…」

 高まってきた情動が私を突き動かし、私は自然と再び胸に手をやるとさっきと同じように胸をせめ、快感をもたらしてくれた動作を繰り返す。

「っん、あぁ……ぁぁあつっあ」

 体からあふれた快感が声になって、あられもない声を私は上げる。

(気持ちい……気持ちいい…けど)

 もしこの手がせつなさんの手だったら?

 あの細くて長いせつなさんの指だったら?

「っ!!」

 目を閉じてその姿を想像してしまうとこれまでとは比べ物にならないほどの罪悪感と背徳感。

(こんなの……だめ、なのに……)

 せつなさんに内緒でベッドに上がって、せつなさんのことを思い浮かべながらオナニーして。

 いけない子だという自覚はあるけれど、でも……もうこの心地よさは止められなくて、

「ふあぁ、っあ、せつなさん……、せつなさん! んぁふ、ぁ。ごめんさない……ごめん、なさい…っ」

 何度も謝るのに指は止まれなく

「あぅ、っ……ふぅあ、…っ」

 頭に靄がかかっていくような感覚に不安はあるけれど、もう頭の中が真っ白になって何も考えられない。

 そのまま私は指を動かしていく。

 時間の感覚が薄れたような中、何分にも数十秒にも感じたその快感の中

「っぁ! あっ……く、ぅ」

 不意に訪れた強い刺激に体をビクつかせる。

「ぁ、ぁっあ……っぁ?」

 小さな絶頂を迎えたということに私は気づけず、高まった快感が中途半端に爆発した中で呆けて指を抜き、手を胸から離す。

 これまで知識として知っていたとうなエクスタシーではなく、なんとも表現し難い事態にどうすればいいかわからないものの、もう一度しようという気持ちにはなれずはぁはぁと荒い息を吐きながら呼吸を整えていく。

 そして、しばらくすると……

「私……何、しちゃったんだろう」

 行為の中では無視出来た罪悪感に襲われる。

 私せつなさんのベッドでこんな……

「こんな……」

 自分がどれほどいけないことをしてしまったのか遅まきながら理解して

「っ…あ…あく……うぅ、ぐ……ごめ、ん、さない……ごめんなさい」

 恥ずかしさ以上にその罪悪感に涙を流していく。

「せつな、さん……ごめんなさい」

 きっと軽蔑されるようなことをしてしまったと何度も何度も謝りながら今更取返しのつかない事実に余計に涙が止まらなくなり私はしてしまったことに後悔するのだった。

 これが何をもたらすのか今はまだ気づけないまま。  

 

前へ/続き

ノベルTOP/S×STOP