旅行に来て散歩、食事と来ればあとはお風呂だ。

 お風呂は桜坂先生を除いた三人で行くことになった。

 というのも桜坂先生はごはんの後眠ってしまって、もうお布団に寝かせている。

 私としてはときなさんも酔っぱらっているんじゃないかと疑っているけれど、本人は大丈夫というし、実際顔が赤くもなっていないし足取りもしっかりしているしでとりあえず一緒に行くことにはなった。

 さすがに三年間寮で生活をしてきたのだから。みんなでお風呂に入るということには抵抗はあまりない。

(これが露天風呂とかならさすがに恥ずかしかったとは思うけれど)

 大浴場にいくつかの種類のあるタイプのお風呂なので寮の時と大差はなく三人で大きな湯船につかっている。

「桜坂先生についてなくて本当に大丈夫なんですか?」

 ときなさんとせつなさんの間に挟まれた私は左側に位置するときなさんへと問いかける。

「よく寝てたし大丈夫でしょう。ずっと運転してきて疲れもあるでしょうしあのまま寝かせててもいいんじゃないかしら」

「けど、少し残念よね。絵梨子さんはお風呂の楽しみにしてたのに」

 とは左にいるせつなさん。確かにその通りだ。みんなでお風呂に入りたいだなんて言っていた気がする。

 もっとも私としては、ただでさえ自分の体に自信がないというのに整った三人になんて囲まれたら少し悲しくなってしまいそうだけれど。

(だって……)

 右へ、左へと視線を流す。

 ときなさんもせつなさんも綺麗な体をしてる。大きいだけじゃなくて綺麗なお椀みたいな整った乳房に、引き締まったくびれ。腕も細くてすべすべだし、自分と比較するといろいろと情けなくなる。

(でも、さすが姉妹って言っていいのかしら)

 顔つきだけじゃなくて体つきまで似るなんて。

 気づけば私は二人の顔を見ては、視線をさげるなんていうお風呂の中ではまずい行動をしていて

「なるほど、渚は胸が好きなのね」

「っ!!」

 ときなさんにそれを指摘されてしまう。

「い、いえ! その……ち、違います」

「けど、さっきから私とせつなの体をなめまわすように見てたじゃない」

「そ、それは……」

 違うと否定できないのは自分でわかっていて、私は助けを求めてせつなさんへ視線を投げるけれど

「……まぁ、渚はたまにそういうことあるわよね」

「せ、せつなさん!!?」

 まさかせつなさんにまでそんなこと言われるだなんて衝撃的で私はどうすればいいのかわからずおろおろとするしかできない。

「渚が興味あるなら触らせてあげてもいいわよ?」

「け、結構です」

「あら、残念。それじゃあ、代わりに渚の触ってもいい?」

「な、なにが代わりなんですかっ!!? ひぅ……」

 え? さ、触られ……? 

「渚は十分可愛いと思うけれどねぇ」

 正面から手の平を当てて……ふにっとわずかなふくらみがへこむのを感じて

「お姉ちゃん、悪ふざけが過ぎるから」

 今度はせつなさんに腕をつかまれてそちらへと体を引っ張られた。

「ふふ、ごめんなさい。渚が可愛かったからつい」

「ついでしていいことと悪いことがあるでしょう」

「そうね。ごめんなさい渚」

「い、いえ……」

 恥ずかしくはあったけれど、ときなさんのことは信頼しているからそれほど恐怖があったわけじゃなくてそう返すけれど、それ以上に

(腕が、当たって……)

 せつなさんに引き寄せられた勢いで腕が胸に当てっていて、その私とは明らかに違う、柔らかくもあり、意外に固くも感じしっかりと弾力のある肌の感触が……

「だいたいお姉ちゃんは昔からそうやって悪戯が過ぎるの」

「ごめんなさいって言ってるじゃない。あ、それとも自分はまだ渚のこと触ったこともないのにずるいって思っちゃったのかしら?」

「なっ!」

「ごめんなさいね。渚の初めてをもらっちゃって」

 私のためを思ってくれているせつなさんの言葉も、やっぱり酔っているんじゃないかというときなさんとの姉妹喧嘩も頭に入らず、私はせつなさんの胸を感じながら結局二重の意味でのぼせてしまうのだった。  

 

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