(……眠れ、ない)

 気づかれないようにお風呂を後にして、急いで着替えて荒い息のまま部屋へと戻ってきた。

 そのまますぐに布団にもぐりこんだけれど、まるで眠れる気がしない。

 だって目を閉じると

(ときなさんと桜坂先生の……)

 二人の絡む裸体が瞳の裏に浮かんでとても眠ることなんてできない。

 それはとても官能的なのにどこか神秘的にすら感じて、いやらしいのにいやらしくなくてまるで夢を見ているような光景だった。

(今頃、どうしてるのかしら?)

 あのまま誰も来なかったらあれ以上のことをするわけで……覗いたキスすら私にとっては未知のもので。

(あれ、以上の……)

 もやもやと頭の中にイメージは浮かぶけれどそれが具体的にはまとまらない。陽菜から借りた本にはそういうことをしているという描写はあっても直接的なものは読んだことはないし、何となくはわかってもぐ本当のところは何をするのかよくわからないから。

 けれど、何となくでもわかってしまってそれがまた私の体と心を火照らせる。

「……私もいつか、するの……かな?」

 せつなさんとあ、あんな……え、エッチな、こと……

 裸で体を重ねてキスしたり……胸、とか……あ、あそこ触りあったり……

「っ〜〜〜!」

 一瞬それを頭によぎらせただけで私は罪悪感と羞恥に掛け布団をかぶって身悶えた。

 何度も見たことはあるからせつなさんの体はぎりぎりで想像できるけれど、それが私の体を重なるっていう瞬間が想像できない。ううん、できるけれど恥ずかしすぎて頭がパンクしてしまいそう。

(全然、想像できない、けれど……でも)

 キスだって最初はすごい恥ずかしくてできる気なんてしなかったのに、今じゃするのは好きって言えるし、嬉しいし……もっとしたいって思う。

 今は考えることすらほとんどできないけれど同じようになるの、かしら?

(せつな、さんと……あんな風、に)

 あまりにせつなさんのことを考えてた私は自然と顔をせつなさんの方に向けると、

「ふ、ぁ」

 隣の布団にいるせつなさんの顔が視界に入って、なぜか声を上げてしまった。

 月明りに照らされてうっすらと浮かぶ輪郭、閉じられた瞳とふっくらとした唇。

 それと、

(む、胸、が)

 はだけた浴衣から胸の谷間が見えてしまって私はわかりやすすぎるほどに動揺する。

 お、落ち着きなさいよ。せつなさんの胸なんていっぱい見ているでしょう? 今更気にするようなことじゃないわよ。

 そういえば、胸って触ったことないな。へ、変な意味じゃなくて! 寮ではたまにふざけて触りあってるのとかは見たことあるけれど、私は一回もそういうことはしたことない。

(どんな、感じなんだろう)

 さっき見たときなさんの胸も、桜坂先生の胸も指が沈み込むようにして形が変わってた。

 せつなさんの胸の大きさも二人と同じくらいだし、触ったらあんな風になるの? どんな感触? 指が吸いつくような感じのなの? 柔らかないのかな、でも意外にそうでもないとも聞くし……

 そんなことを考え出すと目が自然とある場所に集中してしまって……手が、その場所、に。

 こんなこと普段の私なら絶対にありえない行動なのに、旅行の開放感か、さっきの光景のせいか私は少しおかしくなっていて……

 ふに、っと浴衣の上から指を沈みこませた。

(柔らかい、けど、少し硬くもあって)

 知らない感触。でも不思議と手が離せない。もしせつなさんが起きたらどうなるかなんて考えもしないで私はその感触に酔いしれていて……

 だけれど

 ガチャ

「もう、ときなのせいでのぼせちゃったじゃない」

「大丈夫よ、私も絵梨子にのぼせ上がっちゃってるから」

「……そういう冗談はいいから」

 扉が開いて二人が帰ってきてしまって我に返った私は素早く手をひっこめた

(な、なななな、何してるのよ私は!)

「とりあえずこのままじゃ寝れないし何か冷たいものでも飲みましょ」

「いいけど……昨日みたいなのはダメよ」

「わかってるわよ。さすがに渚が調子悪くて寝ているのに起こすような真似はしないわ。だからお風呂行ってきたんじゃない」

 足音と、寝ている私たちに配慮してか潜めた声。でも、しっかりと聞き耳を立てている私は届いてしまって余計なことを考えてしまう。

(き、昨日って?)

 昨日も何かしていたの? それも話を聞く限りこの部屋で? 

 また頭の中にビジョンが現れる。乱れた浴衣と、はだける肌。重なる影……

(……う……うぅ)

 自分がこんなことを考えているのがすごく恥ずかしくてそれに想像だけでもいえkないことのような気になるのに心はそれを止められなくて……

 体が知らない熱に満たされて私は眠れない夜を過ごすことになるのだった。  

 

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