旅行は二泊三日で、翌日は観光に費やし夜はまた同じようにわいわいとすごしあっという間に旅行の時間は過ぎて行った。
その最後の夜。
玲菜は皆が寝静まった頃、一人で部屋のベランダに出ていた。
満天の星空の下それを見上げてをはこの二日のことを思い出す。
昨日結月との入浴の中でも言ったが、間違いなく玲菜はこの旅行のことを楽しいと思っていた。
(……この私が、そんなことを思うとはな)
玲菜はこの数年をほとんど結月とのみ過ごしてきた。
小学校は半分以上、中学はまるまる通っておらず友人は一人も作らなかった。唯一、結月の親友の姫乃とのみある程度の交流はあったが、それでも玲菜の世界は結月がすべてだったと言ってもいい。
玲菜はそれがずっと続くと思っていた。
自分なんかにはまともに友人ができるはずもない。自分と周りではあまりにも違いすぎる。それを唯一受け入れてくれるのは結月だけ。
そう思っていた。
いや、その考え自体は今も変わっていない。
だが、それとは別の感情で玲菜は部員たちのことを愛しく思っている。
姫乃のことも、天音のことも、香里奈のことも、洋子のことも。
誰もが玲菜にとっては大切な……
(友人、だろうか)
うまく言葉が見つからず玲菜は心の中だけでつぶやく。
自分のような人間に結月以外にも四人の友人を持つことができた。
それは嬉しいこと。
玲菜は誰とも交流を持とうとは思っていなかったし、自分などにとすでに諦めていた。
それが寂しかったとは思わない。それは自分にとっては当然だったし、それ以上を望むなどおこがましいとすら考えていた。
だが、今はそれに戻ることなどできない。
この賑やかな日常を知ってしまったのだから。
この日常がずっと続いてほしいとそう思う。
そう、願う。
だが玲菜はこの日常が、楽しく幸せな日々が永遠に続くわけがないということを知っている。
平凡な日常が、当たり前に続く日々のすべてがある日予兆もなく崩れてしまうことがあるのだと玲菜は知っている。
結月の家に住むきっかけとなったことがそうであったように。
楽しいと思っている今は、続いて欲しいと願っている今はきっかけさえさればいつでも崩れ去る儚く脆いものなのだ。
玲菜はそれを改めて思い知らされることになる。