(……私のせいか)
「あむ……ちゅぶ…ぁ、ちゅ。ふぁ」
結月の熱い肌と舌の感触を感じながら玲菜は冷静にそのことを察していた。
「玲菜ちゃん……玲菜ちゃん……玲菜ちゃん……」
結月が求めてくるのはこれが初めてではない。というよりももう何度目かもわからない。数年前からある程度定期的に求められ、玲菜はそれをすべて受け入れていた。
「好き……好きだよ。玲菜ちゃん。大好き」
その愛のささやきはどこか病的で、紡ぐ結月の瞳は潤みながらも淀みを見せている。
結月の誘いはほとんどが定期的で、今日はその周期を外れている。
それも初めてなわけではない。
「ねぇ………玲菜ちゃん」
こうした時は大体激しさを見せる。
「好きって言って。私のこと大好きって、言って」
行為だけでなく、心も。
「……大好きだよ。結月。愛している」
玲菜は結月の求めに応じて結月の求める言葉を口にする。
それは玲菜の本心でもあるが………お互いにお互いを恋人と思ってはいない。
(……異常なのだろうな私たちは)
それを自覚はしている。
だが自覚をしたところで解決するわけではない。
あるのは異常な自分に結月を巻き込んでしまっているという罪悪感。しかしいくらそれを思ったところで玲菜にそれをただそうとする意思はない。いや、正確にはなくはないがただそうとする気持ちが今を続けようという気持ちを上回ることはない。
「玲菜ちゃん……んっ」
また唇が、体が重なる。
「ちゅぶ…ちゅる、ちゅく、ちゅぷ」
すぐに舌が伸びてきて玲菜はそれに応えるように絡ませていく。
肌が重なるたびに心がずれていくそんな感覚。
そう思ってしまうのは何を起因としてこの関係が始まったのかをわかっているからかもしれない。
結月の意図を確認したことはないが、玲菜の自傷行為に関係していることだ。
始まりは傷を知られてからだし、なにより結月は行為の中で玲菜が一番触れてほしくない部分に触れたことはない。弾みで触れ合うことはあっても。
おそらくこれからもこの歪な時間は続いていく。
(……私が、し続ける限りはな)
自分の異常が結月を巻き込んでしまっている。結月に不要な心配と悩みを与え苦しませてしまっている。
その自覚がありながらもその歪みを正そうとはしない。
(……結局私は結月を好きだと言いながら、私のことを優先しているということか)
その事実に玲菜は泣きたくなりながらも、だからこそ玲菜には結月を受け入れる選択肢以外は生まれず
「っ! 玲菜ちゃ!」
「結月……愛しているよ」
体を入れ替え、結月を下にした玲菜は結月の体のキスの雨を降らせていくのだった。