「あ、美咲それとんないでよ」
「いいでしょ。彩音は食べすぎよ」
ゆめにご飯を与えたあたしは、お風呂から出てきた美咲と一緒にゆめの部屋でゆめのお母さんが用意してくれたご飯を食べている。
「……………」
ゆめが寂しくないようにと思ったけど、ゆめはあたしたちの団欒に入れないのがご不満な様子でうらやましそうにあたしたちを眺めている。
「ご飯食べたらあたしもお風呂入っちゃおうかな。あんま時間おくとお湯が冷めちゃうし」
「いいんじゃない。ゆめもずっと私たちがいないとだめってほどでもなさそうだし、片づけくらいは私がやっておくわ」
「悪いね」
「…………だめ」
ご飯を食べながら今後の予定について滞りなく話していたのに、ゆめが何故か拒否の言葉を述べる。
「だめってなにが?」
あたしがお風呂はいるのだめとか? 残り物を食べるから食器を片付けちゃだめとか? くだらない考えは浮かんでくるけど、ゆめの答えは別のものだった。
「……どっちか、いないと…だめ。一人に、しちゃ、やだ」
「普段は一人でしょう」
「……病気のときは、心細く、なる。だから、いないと…だめ」
『…………』
あたしたちは困って顔を見合わせる。
「わかったわよ。じゃあ、片付けは彩音が戻ってきたから彩音にやらせるから」
「なんであたしなんの」
「冗談よ。それは彩音が戻ってきたから決めましょ」
「ま、それなら」
今後の方針を決めたあたしたちはまた食事を再開した。
十分くらいで食べ終えるとあたしは立ち上がってお風呂いくための準備を始める。
「って、あれ? 着替えどこおいたっけ……?」
「忘れないように私が脱衣所にもっていっておいた。前私の家に泊まったときみたく、裸で戻ってこられてもこまるから」
まだ食べてる美咲は淡々と話す。
「バスタオルはしてたって」
「…………着替え」
「ん? どったのゆめ?」
「………着替え、する」
ゆめは着替えという単語に反応してベッドからむくりと起き上がる。
「……汗かいて、気持ち悪い」
ベッドから立つとゆめは着替えのあるタンスに向かっていこうとするけど、足取りはふらふらとしててあぶなっかしい。
「ふぅ、着替えは私がとってあげるからゆめはベッドで座ってなよ」
ゆめの様子を見かねた美咲は的確な指示をして手早くゆめの着替えを取りにかかる。
「うっわー、確かにぬれてんねー」
このまま黙ってお風呂いくわけにもいかないあたしはゆめをベッドに座らせその姿を見る。
汗でパジャマが肌に張り付いてゆめのフラットな体のラインが丸わかり。フラットな、ね。しかし、この病気で弱った姿とも相まって色々そそられる姿だ。
「……彩音。……脱がせて」
さらには赤くなった顔でこの一言。
……もうなんか、あれ。うん、あれ。実は誘ってんでしょ。わかってる、わかってるって。え? もう誘ってるんでしょ? このまま優しくキスして、そのままベッドに倒してってことでしょ。
「……動かすの、つらい」
わかってはいるけど、病気で動くのがつらいだけなんだよね。わかってはいるけど。
「……はいはい」
まさかこの年になって同い年の女の子の着替えを手伝うことになるとはおもわなかったな。
あたしはゆめの水玉のパジャマに手をかけて、上から順にボタンを外していく。
……同い年、同い年なはずなんだけど……改めてみるとそうみえない。
どこからどう見ても細くて、幼い体。顔も童顔だし、本当に同い年、しかもあたしより早く生まれているようにはみえない。
「……はぁ…ふぅ」
服脱がしてる場面で、そんな喘ぎを出すなって。何をしてるかは一目瞭然でも色々五回が生じるでしょうが。
湿り気のあるパジャマのボタンを外し終えて開くと、いつもは白い肌が今は桜色に染まっている。
「はーい、ゆめちゃん。お手てあげてくださいねー」
「……んぅ……ふぁ」
だから、服脱がしてるだけなのに変な声ださないでよ。
パジャマの上を脱がせて、とりあえず軽くたたんで脇に置く。
「うわ、ゆめ。下着まで濡れてんじゃん」
パジャマも湿ってたけど、ゆめの胸にある薄い青色で飾り気のないブラもほんのり染みが出来てる。
(……なんか、エロ)
「…………みたい」
「はい、タオル。しっかり拭いてあげないと体冷やしちゃうわよ」
「まかせて。あたしがゆめを綺麗にしてあげるから」
「……自分で、する」
あたしがゆめの体に手をかけようと勇んでいたところに水をかけられる。さっきは脱ぐのすらつらいとかいってたくせに、こっちの方が動き多いでしょうが。
「なんで、あたしがやってあげるって」
「……彩音、乱暴、しそう」
「大丈夫、優しくするから。ゆめは安心してあたしに体を預けてくれれば」
これは、いったい何の会話を
「……本当? ……っぁう!?」
ゆめが猜疑心のこもった目であたしを見てる間に美咲が自分でも持ってたタオルでゆめの体を乱暴に拭いていく。
「へんな言い争いなんてしてないで、早くしないと余計に悪化させちゃうでしょうが。ほら、彩音も手伝って」
「うぃー」
あたしも美咲とは反対側からゆめのいとけない肢体を攻めていく。
「……ん、はぁ……や、だ……」
ゆめの喘ぎはおかしいけどスルー。
濡れそぼつゆめの体はたおやかで、人形でも相手にしてるような気分。ゆめの声は変だとしてもあたしたちはさすがにそれに流されることもなくテキパキとやることをこなす。
「…………」
と、せなかとお腹を終えて上に視線を持ってくると手を止める。
「……にしても、相変わらず子供っぽいブラだよね。っていうか、子供のか」
「まぁ、小学生のつけはじめって感じよね。貫禄がないというか、体に合ってないというか」
「スポブラで十分なんじゃないの? つか、ノンワイヤーのじゃないとね」
「ゆめならハーフトップがいいんじゃない?」
「いや、いっそなくても大丈夫な感じだよね」
「さすがに、それだとだめなんじゃないの。擦れると結構痛いし」
「…………………」
二人とも手を止めてゆめのまな板を肴に花を咲かせているとゆめが静かに激怒しながらあたしと美咲を交互ににらむ。
「……すぐ、おっきくなる」
「ゆめって昔からそういってんじゃん」
「まぁまぁ彩音。人は届かないから望みを持つものよ」
「………………」
ゆめを半裸にしてる状態だってのに、どうにもゆめをからかいだすとなかなか止まらない。
「ほぁら、じゃ、あたしたちがおっきくする手伝いをしてあげる」
あたしは、いじわるく笑いタオルを持ってないほうの手をゆめの胸に当てる。
「これ、効果ないんじゃないの? 前にもなんどかしたけど変わんないじゃない」
と、口ではいいつつも美咲も自分サイドの胸に手を当てて、軽くもみ始める。
「……ひゃ…ふ……はぁー、ひぅ」
ゆめは短くなやめかしい声を上げ、体をくねらせてあたしたちから逃れようとするけど病気のせいか動きが鈍く、いつもこういうことするとき抵抗してくるけどそれすらもできない様子。
つまり、今ならもれなくゆめをなすがままってこと。
ふにふに。
でも、揉むものもないから、これは揉んでるとはいえないなぁ。マッサージって感じ。
「……くぅ…ん……は、ぁ」
ゆめは情けない声をだして、気付けばブラもくしゃくしゃとしわがついている。やめどきがつかめないのでそのままするけど
「……っくしゅ!」
ゆめが可愛くクシャミをして、我に帰る。
そういや、風邪引いてるんだから脱がせたままいつまでもこんなことしてるわけにはいかないんだった。
「さぁて、ちゃんと汗ふかないと……」
「そうね、悪化されて私たちのせいにされても困るもの」
あたしと美咲は実に自然な感じで本来な目的に戻る。
もうブラとってもらわないと拭くところないなー。
「………………」
自然な感じで戻ったはずなのに、何故か表情のすくないゆめが珍しく怖い顔であたしと美咲をにらみつけてる。
いやー、何が気に食わないんだかこの子はあたしたちの愛がちっとも伝わってないよ。
「……自分で、する」
さっきそういったときより数倍は力のこもった声だった。
「……二人、とも。すぐ、わたしの…体で…遊ぶ」
ゆめはムスーとした顔でいってあたしたちからタオルを奪い取った。
日本語をちゃんと勉強して欲しいと思う今日この頃。これだと、なんかまるっきり別のことやったみたいじゃん。確かに遊びはしたけど。
有無を言わせないゆめの様子にしかたなくあたしたちは黙ってゆめが体を拭いて着替えるのを見ていた。
緩慢だったけど、手を出すとゆめが怒りそうだから黙ってゆめのすることを見つめる。
じれったいねー。パジャマの下脱ぐのもふらふらとしてるし、ショーツは少し濡れてるっぽかったけどさすがに変えないみたいだね。
ゆめが一通り作業を終えて、美咲が用意していた新しいパジャマに袖を通そうとする。
「あれ? ゆめブラつけないの? 寝るときにしないと大きくなるなんて迷信だと思うよ。あたしは」
「……………」
さっき怒らせたばっかりなのに反省のないあたし。
「…………汗かくと、蒸れる……やだ」
ゆめはそういってもぞもぞとベッドに戻っていった。
あたしも、ゆめをこれ以上怒らせるのは得策じゃないと判断し着替えを見終えると、お風呂へ逃げていくのだった。