「……私、何でもする」
脳が焦げていくような感覚。
この言葉ではなく、この部屋の雰囲気が、望の持つ空気が沙羅の頭を焼いていく。
「……………」
わかりたくないのに、望が何を言おうとしているのかが理解できてしまう。
「沙羅の言うこと……何でも、聞く」
わかっていない。わかっていない!
この子供は何もわかっていない!!
「二人きりの、時なら、なんでも言うこと聞く……なんでも、して、いい、から」
望が覚悟を持ってここにきたことは間違いないのだろう。
だが、望がどんな想いを持っていたとしても、どんな覚悟を持っていたとしても沙羅にはそれがわからない。
望はもしかしたら夜通し考えていたかもしれないし、沙羅に言った意味も理解し、そういう覚悟もすべてしてきたのかもしれない。
しかし。
「だから、……だから、ね」
沙羅にはもはや望の気持ちなんてどうでもよかった。
「……友達でいて」
脳が焼ききれる音がした。
心が砕ける音がした。
「沙羅が、いなくなる、なんて、やだ……沙羅と一緒に、いたい、よ」
「…………」
「…………ね、沙羅。何でも、いいから、何してもいい、から」
「…………」
「私と、友達に……」
「…………………………」
「……沙羅?」
うつむいたまま何も返してこない沙羅を不思議に、いや、不安に思ったのか望は沙羅の顔を覗き込んだ。
瞬間、
「きゃっ!!!??」
望は一瞬だけ体が浮く感じを受け、次の瞬間には柔らかなものに受け止められる。
そして、
「ぁん!!?」
体が押される感覚とともに、今度は別の柔らかなものに背中を押し付けられた。
「っ……」
自分の覆いかぶさる沙羅の真っ赤になった目を見て望は何が起きたのかを理解した。
沙羅にベッドに引き込まれ、ベッドに押し倒されたのだ。
「っ……は、……っ」
沙羅は押し倒しながら、望に覆いかぶさりながら呼吸すら忘れたように、目を見開き唇をかんでいた。
(……望)
心の中で、まるで親の敵を呼ぶかのような、いや、そんなものではない。世界中から拒絶されるような悪意の塊を見つめるかのように呼んだ。
いとしいはずの相手を。
「さ、ら……」
望の声は小さく、細い。
ふざけるな、ふざるけな。
(ふざけるな!!)
友達?
何でもするから友達でいて?
(ふざけないで!!)
まるで違う。
沙羅の好きと、望の好き。
距離じゃない、次元が違う。
(こんなんじゃ……届く、わけがない)
どんなに強く想っても、願っても………
届くわけがない!
「っ……、っ」
口を開けば、嗚咽がこぼれてしまいそうで沙羅は瞳を熱くぬらしながら、望を見つめるしかなかった。
無意識に限界以上の力で望の肩を抑えたまま
「……っ」
沙羅の感じている苦痛に比べれば比べるべくもないが、望の感じている肉体的な苦痛は並大抵のものではなかった。
普通の人間であれば泣き叫んでもおかしくないほどの苦痛。
しかし、望は苦悶ひとつ漏らさなかった。
時折、痛みに顔をゆがめてもそれすら一瞬のこと。
耐える、つもりなのだ。さっきの言葉のとおり、何でも言うことを聞き、何をされても、それを受け入れるつもりなのだ。
何が望をそうさせているのか、沙羅にはわからない。
いや、考えてすらいない
(望……のぞみ……望……のぞみ!!!)
今、目の前にいる人間はもはや沙羅にとって、好きな人ではなかった。
あえて何かというのであれば、
敵。
沙羅の心を苦しめ、傷つけ、地獄へと追い込もうとする敵だった。
何しても、いい?
(ふ、ふふ……ふふふ)
して、あげようじゃない。
穢してやる。
塗り替えてやる。
(染めて、やる)
口の中が血の味であふれかえる。
痛みはなく熱さだけが沙羅の体を支配し、
沙羅は望の体に手を