その日一日、みどりちゃんと全然お話ししなかった。昨日と同じように目を合わせることもなくみどりちゃんのことを考えながら悶々と過ごす一日を過ごした。
お昼休みとかでも時間があったのかもしれないけど、みどりちゃんが放課後って言ってくれたんだからそれを待つことにした。
そして、今日も長く感じた一日が終わって放課後がやってくる。
「……お話しって、なぁに?」
二人きりでお話しできる場所。本当は私の家か、みどりちゃんのお家がいいと思ったけどさすがに今それを切り出すことはできなくて、場所は奏ちゃんと初めてお話しした公園にした。
小さな子供たちがまばらにいる公園のベンチに並んで座ると、さっそくみどりちゃんのほうから切り出してきた。
「う、うん」
うつむいて私を見てくれないみどりちゃんにドギマギしながら頷いて、少しだけ心を落ち着かせて、
「……ごめんなさい」
その一言に精いっぱいの気持ちを込めた。
「……………」
みどりちゃんはそれに何にも反応を示してくれなかったけど、私は止まらなかった。伝わるはずだから、みどりちゃんに気持ちが。
伝えなきゃいけないから、みどりちゃんに気持ちを。
「私も、ね。藍里ちゃんと葉月ちゃんが……キス、してるところ見ちゃった。私は、ね、もう一か月近く前だけど、その……だからみどりちゃんに藍里ちゃんのこと聞いたとき、すごく、びっくりしたの」
「………………どぉして、その時言ってくれなかったの?」
「っ!」
私の話を聞いてるだけだったみどりちゃんがこぼしてくれた、もっともな言葉に一瞬言葉を詰まらせる。
「そ、そのほうがみどりちゃんのため、って思ったの」
こんなことを言ったら普通はもっと怒るって思う。こんなことになっちゃってるのに何がみどりちゃんのためだって怒るって思う。
けどもとは聖ちゃんに言われたことだけど、今は本当にそう思ってる。
「誰かに言われたからとか、そういうんじゃなくて……ちゃ、ちゃんと藍里ちゃんへの気持ちに向き合って欲しいって思ったの。そのほうがきっと、後悔しないって思ったから」
……それを台無しにしたのは私なのに、図々しくこんなことを言ってる。本当は私にこんなこと言う資格なんて……
(……ううん、信じよう)
今は誰よりも心が離れちゃってるかもしれない。でも、ほんの一昨日前までは誰よりも近かった。
今まで築き上げてきたみどりちゃんとの時間を、絆を信じよう。
「……この前だって、言うつもりじゃなかったの。でも、私も混乱しちゃってて、みどりちゃんのことどうやって元気づければいいかわからなくて……」
また私変なこと言っちゃってる。でも、いい。こういうところも含めて、【私】だってみどりちゃんならきっと。
「本当に、ごめんなさい。許してなんて、言えないけど……でも、私みどりちゃんとお友達じゃなくなるなんて嫌。私にできることなら、なんでもする。だから、みどりちゃん……」
支離滅裂で、わがままで、どうしようもないくらいに自分のことしか考えられてないことを言ってるのかもしれないけど、でも私は
「……お友達でいて」
これからもずっとみどりちゃんとはお友達でいたいの。
「……………………………………………」
長い、長い沈黙。
時間がたつたびにはやる鼓動。
「撫子、ちゃん」
そんな針を刺すような時間にみどりちゃんの涼やかな声が響いた。
「う、うん」
「今度のお休み、時間ある?」
長い沈黙を破って出てきたみどりちゃんの言葉は私には今の状況とかけ離れたもので
「ふぇ……?」
私は思わず首をかしげちゃったけど、みどりちゃんが続けたのは
「……デート、しよ」
もっと私の混乱させる言葉だった。