私たちの住んでるところからいわゆる街って言われる場所までは電車で一時間くらい。その間みどりちゃんとお話ししたのは他愛のない話。

 みどりちゃんの方から話しかけてきてくれて、最初は学校の話だったりして、その後受験の話。それから、テレビのことや漫画のことなんかを話した。

 でも、学校のことは話しても、藍里ちゃんのことや葉月ちゃんのことは一言も口にしなかった。

 それがどういう意味でそうしてるのかわからないけど、でも久しぶりみどりちゃんとお話しできるのは嬉しかった。

 だから、あっという間に時間は過ぎて行って、目的の駅までついちゃってた。

 私ははっきり言って今日のこと何にも考えてない。デートっていうのをしたことはないし、それにみどりちゃんが誘ってきたのはみどりちゃんがどこか行きたいところがあるって思ってるから。

「えっと〜、まずはー」

 慣れない大きな駅を歩いていって、自動改札を通って駅ビルに入っていく。

「ふわぁ……」

 そこで私は思わずあたりを見回しちゃった。

 明るい店内に色々なお店、たくさんの人。どれもが普段は目にしないもので、こういうのを見ると都会に来たなぁって思う。

 きっと、東京とかそういう本当の都会に比べればここも全然田舎なのかもしれないけどでも私にとってはここも都会でちょっと圧倒されちゃうくらい。

「本屋さんいこぉー」

「う、うん」

 どうするんだろうって思う暇もなくみどりちゃんは私の前を歩き始めた。

 同じ駅ビルにある本屋さんにくるとやっぱりここでも圧倒されちゃう。地元にあるのは小さな本屋さんばっかりでこんな風に一面本ばっかりのところなんてほとんど見ない。

「何か、欲しいものがあるの?」

「んーんー、見てるだけー」

「そうなんだ」

 二人一緒に本棚の間を歩き回る。普段こんなに本を見ることがないからいろんな本を眺めるだけでも楽しいのは楽しいけど。

(みどりちゃん、こういう本興味あったっけ?)

 さっきからみどりちゃんが見てるのは、歴史の本とか外国ことが紹介されてる本とかあんまりみどりちゃんが見てたりする記憶はないものばっかり。

 いつものみどりちゃんなら、編み物の本とか動物の本とかを見るのに今日はそういうのはちっとも見てない。

 それに、雑誌とかちょっと手に取ったりもするけどほとんどはすぐに本棚に戻しちゃう。あんまり興味があるように見えない。

(どうして、こんなことしてるんだろう?)

 つまんないとかじゃなくて、変って思うの。それにちょっとだけ元気がなくなった感じがするし。

「えへへ〜、他のところいこっかぁ」

 なんてことを思い始めてるとみどりちゃんは急に表情を変えてそんなことを言ってきた。

「うん」

 私には断る理由もなくて素直にうなづくとみどりちゃんについていって、エレベーターに乗り込んだ。

「今日は、あのお店いかないの?」

 駅ビルから外に出るつもりなのか、一階のボタンを押したみどりちゃんに聞いてみる。

 ここに来るとみどりちゃんがいつも行くお店があった。それは、可愛いものがいっぱいの小物屋さんでほおっておくと何時間も見ていることがあるくらいみどりちゃんの大好きなお店。だから、当然今日も行くって思ってたけど。

「うんー、今日はいいの〜」

 みどりちゃんから返ってきたのはそんな言葉だった。

「そう、なんだ」

(……やっぱり、みどりちゃん、ちょっと、変?)

 何がって言われるとうまく答えられないけど、絶対にいつもとは違う。

 朝からみどりちゃんのすること、言うことにそんな違和感を積み重ねていく。

「ここ?」

「うんー、いこぉ」

 それは次に来たところでも強くなっていく。

 ここは駅ビルの隣にあるゲームセンター。ここもあんまりみどりちゃんとは縁のない場所。私もあんまりゲームとかしないから、みどりちゃんと二人で来たことはほとんどない。プリクラとかも苦手だし、私がこういうところにくるとしたらそれは、藍里ちゃんや葉月ちゃんと一緒に来る時くらい。

 藍里ちゃんは結構ゲームが好きみたいでこういうところでもしてたりするみたい。自分ではしないけど私も藍里ちゃんのしてるのを見るのは楽しくて好きだった。鉄砲うつのとかが得意みたいで百円で何十分もしてたのを覚えてる。

 あとは、クレーンゲームとかは嫌いじゃないけどほとんど取れないからやっぱりあんまりやったりはしない。

「あれ、やってみよぉ」

 言ってみどりちゃんが近づいていったのはさっきに言ってた藍里ちゃんの得意なゲーム。

「う、うん」

 今までやったことはないけど、藍里ちゃんがやってるのを見たことがあるからやり方くらいはわかる。打つ時は足元のペダルを押して、離すと隠れる。隠れてれば安全だけど時間制限があるから隠れてるだけじゃだめで、ちゃんと打たなきゃいけないんだけど。

「あー」

 私もみどりちゃんもほとんど初めてやるから、やり方がわかってるくらいじゃ全然うまくいかなくて初めのボスのところで二人ともやられちゃった。

「やっぱり、難しいねぇー」

「うん。あ……」

 藍里ちゃんはすごいねって言おうとしてやめた。

 今は【デート】中なんだからきっと藍里ちゃんの名前を出しちゃいけないって思う。

(……デート、なんだよね)

 みどりちゃんはそうやって誘ってきたけど、こういうのがデートなのかな? よくわからないけど二人ともあんまり興味なさそうなことをするのってあんまり普通のデートじゃない気もするけど。

 ゲームの後はクレーンゲームしたり、プリクラを取ったりしたけど、私も藍里ちゃんも笑ってはいるけど、二人ともどこかぎこちない笑顔ばっかりだった。

「そろそろお昼食べよっかー」

 何かするたび、どこかを行くたびにデートの違和感は高まるばかりでそれはこのお昼ご飯でも続いていく。

 

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