「あ、戻ってきた」
教室に戻ると、葉月ちゃんに声をかけられた。
藍里ちゃんとみどりちゃんも一緒で、なぜか私の机に集まってる。
「な、何かあったの?」
私はそうとしか思えなくてちょっと慌てて、三人に寄っていった。
「それはこっちのセリフ」
そう言って口をとがらせたのは藍里ちゃん。
「え?」
私がなんのことかわからない困惑してると、
「撫子ちゃんが、元気ないよねって話してたの〜」
みどりちゃんが理由を教えてくれた。
「あ………」
瞬間、胸が暖かくなった。
嬉しいって思ったの。
三人が奏ちゃんと同じ理由で私のことを心配してくれたのがわかったから。
「まぁ、なんか悩んでるのはわかってるんだからさっさと話しなさい」
「って、藍里。その言い方はないよ」
「撫子にはこのくらいの方がいいのよ。一人で悩ませたってどうせ自分が頑張らなきゃとか思うタイプなんだから」
「あ〜、撫子ちゃんってー、そうかもー」
「だとしても、撫子にも心の準備とかあるでしょ」
みんな口々に私のことを言い当てるけど、言い方はどこかいじわるなところもあるのに全然嫌な気持ちじゃない。
最近、聖ちゃんや奏ちゃんといることが多くなってこうして四人で話す時間が少なくなってたから余計に思うのかもしれないけれどやっぱりみどりちゃんも藍里ちゃんも葉月ちゃんも優しい。
私にもったいないくらいのお友達。
「……………」
「ん? 撫子何笑ってんの?」
「え!? わ、笑ってた?」
「うん〜。なんかにまーってしてたぁ」
「そ、そう、かな」
自分じゃそんなつもりなかったけどついそうなっちゃってたのかも。
聖ちゃんのこととは全く別に素敵なお友達がいるって改めて思えたから。
キーンコーンカーンコーン。
『あ』
私がそんなことを思ってるとお昼休みが終わるチャイムがなって、一様にそう声をだした。
「時間切れか。ま、話したくなったら話しなさいよ」
「うん。悩みすぎて変なことになる前にはね」
「いつでも撫子ちゃんの力になるから〜」
「あ、ありがとう」
席に戻って行く三人に私は奏ちゃんの時と同じようにそう答えて自分も席に座った。
(……嬉しいな)
って強く思いながら。
午後の授業はそのまま教室で始まったけど、私は授業半分にあることを思ってた。
(そういえば、……これも聖ちゃんのおかげなのかな)
結構本気でそう思うの。
少しの間だったけど、私は誰とも話せなくなってた時があった。
藍里ちゃんと葉月ちゃんとのキスを見て、世界が変わってみんなそうなんじゃないかって不安で怖くて、独りになっちゃってた。
だけど、聖ちゃんとお話しをして、そうじゃないってわかってまたみんなとお話できるようになった。
聖ちゃんとお話できてなかったら今だって、誰とも話せてなかったかもしれない。
奏ちゃんとも仲良くなれなかったかもしれないし、みどりちゃんの時も何もできなかったかもしれない。
聖ちゃんは私に優しくしてくれたのは私に気に入られたかったからなんて言ってたけど、私はそんな風には思わないし、そうだったとしても聖ちゃんが私のことを助けてくれたのは本当。
聖ちゃんがいてくれなかったら私は………
「っ!!」
そんなことを考えてた私はいつの間にか授業中なのに後ろを振り返って聖ちゃんの席を見て、ドキリとした。
(目が、合っちゃった………)
聖ちゃんも私のこと見てて私はすぐに前を向きなおしたから一瞬だったけど、でも目が、合っちゃった。
悪いことしてたわけじゃないけど、私はどうしてか授業に集中して、聖ちゃんから頭を切り替えようとしたけど
(あ、あれ………?)
なんだか、変。
全然胸のドキドキが収まらない。
ドクンドクンってすごい動悸がしてる。
(な、なんで?)
ドキドキしてるっていうのを意識するともっとドキドキしてくる。
全然理由はわからない。でも、止まってくれない。
いつの間にか顔も、体中が熱くなってる気がする。
ドクン、ドクン
(ふぁ………なに、これぇ)
わからないまま胸のドキドキはしばらく続いて結局全然授業に集中できない時間を過ごしちゃった。