仲直りをしてからせつなさんとご飯を作って、一緒に食べた。ここでの食事は初めてじゃないけれど、もう私は【お客さん】ではなくて一緒に住むパートナー。

 それを意識すると以前食べたときよりもおいしく感じられた。

 それから一緒に片づけをして、明日はどうするなんて話し合ってどれもこれも今までもしたことはあるけど今まで以上に特別で幸せを感じた時間。

 お風呂は今まで一緒に入ったこともあるけれど、さすがに寮とは違って二人はいれば密着しちゃうようなお風呂に入るには心の準備が必要で別々に入った。

 それでお風呂から出ると今日はもう疲れもあるということで寝るってことになったんだけど。

(や、やっぱり……こんなことするんじゃなかった)

 ピンクのシーツの敷かれたベッドの上で私はそれを思っていた。

 この部屋にベッドは一つしかない。つまりはそういうこと。

 せつなさんのベッドに二人で寝そべっている。

 人は親密な人以外には確か十五センチ以内くらいの距離に入ってこられると不快に感じるっていうけれど、せつなさん相手にそんなこと感じるわけもなくむしろ心臓の鼓動が早まるだけ。

 この部屋には私用の布団のあるけれど今日は一緒に寝たいと私の方から提案した。

 私が楽しそうじゃないなんて言われたことに意趣返しと、それに一緒に寝たいという欲求を混ぜて望み通りにはなったんだけれど……

「うぅ……こんなに緊張するなんて」

 手を伸ばせば届く距離、触れ合っていなくても感じる熱、漂ってくる甘い香り。

 そのどれもが私の心を刺激して……誘惑して、心に入り込まれるようなそんな感覚に私の頭はくらくらと揺れる。

「せつなさんはさっさと寝ちゃうし……」

 べ、別に何かを期待してたとかじゃないけど、あっさりと眠られるとなんだか意識されていないようで少し複雑でもある。

「………はぁ」

 ドキドキはしているけれど、せつなさんがそうでもないのかなと思うとなんだか少し落ち着いてきた。

(今は、このくらいの距離の方がいいのかも)

 たぶん子供に思われているっていうのもあるんだろうけど、でも私にはまだいろいろな覚悟も足らないし、今のこの距離がふさわしいかもしれない。

 ずっとこのままがいいなんて私も思ってはいないけれど、でも……私は今こうしているだけですごく幸せだから。

 だから

(……今はこの幸せながいつでもそばにある生活を楽しんでみよう)

 そして、いつか絵梨子先生の言ったように……少しずつ前に進んでみるのも悪くない。

 私はそんな風に想うと自然とせつなさんが愛しくなって体を少しだけ寄せるとせつなさんの腕を大切に抱きながら眠りにつくのだった。

 

 

「すぅすぅ……」

 隣、密着っていい距離でベッドに横になる愛しの少女は穏やかな寝息を立てている。

 ベッドに入って数十分ほどは悶々としていたようだけど、意外に早く寝入ってしまった。

「まぁ、渚らしいけど」

 渚には悪いけれど、渚は良くも悪くもまだ幼い部分が多い。聡い子だし知識はあるのかもしれないけど、実感はしていないんだろう。

 体の奥から湧いてくる激しい感情を味わったことなんてないんだと思う。

 そういうところが渚のいいところだとは思うし、可愛いとも思っているけれど……

 私は

「この状況ですんなり眠れるほど大人じゃないのよね」

 渚の前では決して口にしない言葉を吐いて私は渚へと身体を寄せる。

 寝たふりをしたのは妙な空気にならないため。渚はそこまで考えていないでしょうけどベッドの中でこうしていたら何が起きるかわかったものじゃないから。

 だから今は渚の可愛い顔を見られればそれで満足だ。

「私、ほんとに今日を楽しみにしていたんだから」

 また渚とおはようからお休みまで一緒の生活ができる。しかも今度は完全に二人きりの時間。

 楽しみじゃないわけないじゃない。

(まぁ、確かに少しはしゃぎすぎちゃってたけど)

 それに下着を手に取るのはやりすぎてしまったなと反省もしてる。意外なこともあってつい手に取ってしまったけど、非難されて仕方ないこと。まして渚相手じゃなおさら。

 でも渚が楽しみにしてくれたのは本当に嬉しく思う。

 私ばっかり楽しみにしていたんじゃ……なんというか、不公平だ。

 不公平という言葉は正しくないような気もするけれど。でもそんな感じ。

 だって、私は本当に楽しみにしていたのよ。それなのに渚が私と同じくらいに楽しみにしてくれてなきゃ嫌じゃない。

 お揃いがいいって私だって思ったりもするのよ。

「もっとも、私と渚じゃお揃いじゃないところもいっぱいあるんでしょうけど」

 渚の頬に手を添えながら私は少しだけ複雑に笑う。

「けど、それでもいいわよ」

(だって、私は今最高に幸せなんだから)

 大好きな人と同じ部屋で、同じベッドで眠ることができる。

 一番無防備な姿をさらしてくれている。

 それだけ渚が私に心を許してくれているということが本当に嬉しい。

「だから」

 今度は悪戯っぽく笑うと、渚との距離をつめて

 ちゅ

 と頬に口づけをした。

「今は貴女との幸せを大切にしていくわ」  

 

1−3/1おまけ/2話

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