「みやちゃ〜ん、えへへ〜」

 暗くなった部屋で八重さん寝言が響いてくる。

 新年のあいさつをして、色々お話したりしてたらいつのまにか二時を回ってやっと寝ようって話になった。

それから、一時間くらい。

もうとっくにいつも眠る時間をすぎていたわたしは中々寝付けなくて、お布団の中でずーっと顔を隣のお布団に向けていた。

 ううん、眠る時間を逸してたからじゃない。

 わたしが眠れない理由、それは……

「っう…ん……すぅ」

 隣で安らかな寝息を立てる涼香さん。

 そう、涼香さんが隣で眠っているから。

 狭くも広くもない管理人室で、管理人さんは八重さんと一緒のベッドに、わたしと涼香さんはコタツを一端片付けてそのスペースにお布団を敷いて並んで寝てる。

 一緒のお布団がよかったって思わないでもないけど、恥ずかしいし、こうして隣に涼香さんの寝顔があるってだけですごく嬉しくて安心する。

 それと……

「むにゃ……くぅ」

「っ!!

 すごくドキドキする。

 暗くて顔もよく見えないけど、涼香さんがわたしの隣で眠ってる。すぅすぅって穏やかに寝息を立てて。

 わたしはお布団の真ん中に寝てたはずなのにいつのまにか、涼香さん側の端っこまで来てて今にもはみ出しちゃいそう。

 もう手を伸ばすと届いちゃうような距離に涼香さんがいる。

 胸が爆弾みたいにドキドキして落ち着こうとしても、どんどん早鐘を打っていく。

「んぅ……く〜」

 涼香さんがお布団の中で軽くもぞもぞと動いて

!!?

 毛布の隙間から涼香さんの手が出てきた。

 わたしと涼香さんの布団のわずかな隙間にその手が落ちる。

「……ゴクン」

 思わず生唾を飲み込んだ。

 どうしよう。手、握るくらい、いいのかな? 涼香さんが眠ってて勝手にすることになっちゃうけど、キスとかするわけじゃないんだし、それに手くらい今日だって握ってくれたし……それにそれに、手が毛布から出ちゃったら涼香さん寒いかもしれないし。

 だ、だから、

(いい、ですよね……?)

 恐る恐るわたしも毛布の中から手を出して、涼香さんの無防備な手に寄せていく。

(あ、でも……)

 も、もしかして、まだおきてて勝手にこんなことしてるなんて思われたらどうしよう。我がままでもいいって言ってくれたけど、でも……寝てると思って勝手に手を握るなんてやっぱり……嫌われちゃう……かも……

 涼香さんは優しいから嫌いになったりはしないって思うけど、でも、勝手な女の子って思われるのは涼香さんが許してくれてもわたしがいや。

「むにゃむにゃ……みや、ちゃん……」

 たまに聞こえる八重さんの声は静かな分よく響いてくる。

 八重さんなら、こんな時簡単にしちゃうって思う。ベッドに入ったときも手を握るどころか抱きつかないでって何度も宮古さんに怒られてたし。

でも、本気で怒ってる感じじゃなかったから手くらい繋いでるのかも……

 好きな人にそんなに素直になって、そんな風にできるなんてすごくうらやましい。

 わたしも少しだけ、素直になりたい。

(涼香、さん……)

 わたしは勇気を出して手を伸ばすと外気にさらされてる涼香さんの手をきゅって握った。

(あったかい)

 毛布から外れたこの近くて遠いお布団の間は冬の寒さが満たしてるけど、涼香さんと手を繋いでるだけでそんなの全然気にならない。

 あったくて嬉しくて……手だけがつながってるのにまるで心の中までつながれたような気がしてまるで雲の上にでもいるみたいにふわふわな気持ち。

 手なんか握っちゃったらもっとドキドキして眠れなくなっちゃうような気がしてたけど、なんだかこのふわふわな気持ちのまま眠れちゃいそうな気がしてきた。

(なんだか……いいゆめ、見られそう)

 そしてわたしはとても幸せな気持ちで寝入っていった。

 

 むぅ……なんとも微笑ましいというか、じれったいというかw 美優子らしくもあり、らしくもなく……w でも、美優子みたいなドキドキっていいですよね。もう一歩踏み込みたいのにその勇気が中々でなくてぐるぐると思い悩む。もっと色々話をしたいけど、変なこと言って嫌われるんじゃって怖がったり、話すよりもっと好きな人の声が聞きたかったり。手をつなぎたいけど、中々言い出せないし例え眠ってて無防備でも【もしかしたら】を考えちゃって一歩が踏み出せない。

 そういうことの繰り返しで少しずつ進んでいくのが【恋】なんじゃないかなぁと、勝手に思ったりなんかしてます。

 

おまけ2/20-1

ノベルTOP/S×STOP