「え!? 美優子って今度の日曜が誕生日なの!?

 

 寮、私の部屋。せつなは気を使ってか部屋を離れていて今は美優子と二人きり。歓談が進む中、美優子から衝撃的すぎる言葉が飛び出してきた。

「は、はい……」

 美優子が来週の日曜日誕生日だっていうのだ。

(っ………)

 胸が破裂しそうなくらいに跳ねた。考えてもいなかったことに体が反応して震えだす。

(こんな、ことって……)

 なんでこんなことが……

普通なら、驚きはしてもこんな風に動揺はしない。私にはその理由がある。驚きうろたえてしまう理由が。

「も、もぅ〜。なんで今まで教えてくれたかったの?」

 私は一瞬、明らかに狼狽してしまったけど次の瞬間には普段の私に戻って美優子に迫った。

「だ、だって……なんだか言ったら催促してるみたいで……」

 美優子はそんなこと言ってるけど、お祝いしてもらいたくないわけがない。この話の流れ自体は私がしちゃったけど、言ったのは美優子なんだから。そういう気持ちがなければ言ったりなんてしないはず。

「そんなこと思わないって。ってか、いいじゃない。催促したってさ、わ、私は美優子のこと好きなんだもん。むしろ、言ってくれないほうが怒るってば」

「涼香さん」

 美優子の少し不安そうだった顔が笑顔に戻り、声に歓喜が混じった。

 今の私はまだ平常心のまま美優子と話せている。うん、美優子には話せても不思議じゃない。だって、美優子はあのことを知らなくて、私は知ってるのだから。

(私は……美優子のことが好き。大好き。友だち以上に美優子のことが)

 当然、美優子の誕生日をお祝いしてあげたい。私自身は誕生日なんてあの女から生まれたことなんて考えたくもなくて嫌いだけど、普通はそうじゃない。私だって誕生日っていうことさえ考えなければさつきさんから祝ってもらったのは嬉しかった。それに、誕生日がなければここに私はいなかった。さつきさんとも、せつなとも、美優子とも出会えなかった。そんな私の大切な人に会えるきっかけが出来た日なんて思えば誕生日も受け入れられていた。

 でも、普通はそんな考えする必要もなく、家族に友だちに、……好きな人にお祝いしてもらえる誕生日は誰にだって特別なはず。

 そう、美優子じゃなくても特別なはず。

「涼香さん?」

 美優子がどうしたんですか? っていわんばかりの顔で私を見つめていた。

 美優子の前じゃ思い詰めないようにしようとしていたはずなのに気付けば考え事をしてしまっていたらしい。

「う、ううん。何でもない。美優子にどんなプレゼントしようかな〜ってちょっと悩んじゃっただけ」

 何でもないわけがなかった。神様を、運命を呪っていた。

 だって、だって、その日は。

 

 せつなの……誕生日だ。

 

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