運命の分岐点。
もしそんなものがあるのなら私はそれをすでにいくつか体験してきた。
お姉ちゃんを追ってこの学院を選んだこと。
涼香と出会い、涼香を好きになったこと。
つまらない不安から涼香への想いを爆発させてしまったこと。
涼香の気持ちを悟り、美優子との仲を押してしまったこと。
誕生日すらとられたショックでくすぶっていた想いを再度涼香にぶつけてしまったこと。
涼香に恨まれたくない一心で涼香が美優子と復縁する手助けをしてしまったこと。
私を慕ってくれる後輩を振り切ってまで実る可能性のない涼香への想いにすがったこと。
苦しんでいる涼香を美優子とは違う方法で救いたいと誓ったこと。
そのどれ一つとして欠けていたら今の私はありえない。嬉しかったこと、悲しかったこと、後悔したこと、悩み苦しんだこと、それらがすべて合わさって今の私を、今の私と涼香を生み出した。
選ばなかった、選べなかった道を想像し涙したことは少なくない。
今ですら、美優子に協力したほうがいいという声が心のどこかでは響く。だけど、それは意味のあることではなく、どんな状況だろうと自分が選んだ道を歩いていくしかない。
私はその道の途中。
その先の道は幾重にも分かれているはずでも、前方には暗闇が広がり先に何が待つのかを知るすべはない。
今歩く道、これまで歩いてきた道、これから歩くいくつもの道。
それらに正解などはないのかもしれない。どれを選んでも自分の望むことにはならず、すでに私の道は涼香と一緒になることはありえないのかもしれない。
しかし、それを確かめるすべはなく私ができるのは、すべきなのは、私が涼香のためを想った道を歩いていくだけ。
そう信じて歩くしかなかった私は今新たな分岐点にたどりついている。
それは、今まで私が通ってきた道とは違う。今までは涼香との道をたとえ離れたとしても、まだ修正がきく範囲だった。こうして、交わることのできる道をたどってきた。
だが、これから歩いていく道はおそらく違う。
そういう予感がする。
今までとは違う大きな、大きな分岐点。
涼香との決定的な何かが起こってしまいそうな分岐点。
運命の分岐点なんて言ってしまったけど、思い返すと違う気もしてくる。
私が今まで選んできた道、歩んできた道、これから歩む道。それを運命なんていうもので片付けられたくはない。
私は私の意志で今の場所にいて、これからも私が私として後悔だってある道をあゆんで行くのだ。
運命なんていう都合のいい言葉でそれを片付けさせはしない。
この分岐点も。私の歩む道を涼香が決めるのだとしても、それも私の意志なんだ。
こう思うようになったのは何時ごろだったかははっきりしていない。
しかし、その時は唐突にやってきた。