珍しいことが起きてる。

 あたしはベッドのに背中を預けながらそう思っていた。

 それも

「ん……あむ……ちゅ、ぷ。にゅる」

 ゆめの熱烈なキスを受けながら。

 こんなキスをゆめからしてくるのは珍しい。

 普段もだけど、ゆめはいろんなことに消極的であたしにされるがままになることが多いのに。

 今日のゆめはちょっと様子が変で、ベッドに押し倒してきたかと思えばこんなキスまで。

 色々びっくりだけど

「ちゅむ、ちゅぅ……くぷ、ちゅ」

 あたしはゆめのちっちゃな体を抱いて舌を返す。

(っ……?)

 そこでまた違和感。

 普段ならキスだってあたしが主導権を握る。なのに今日のゆめは積極的に舌を返してきてきた。

「ぅ、ぅん……ふぅ、むゅ、じゅるちゅく。ちゅぷ」

 仕方ないからゆめの好きにさせて、ゆめの舌があたしの舌に絡んだり、口の中を舐めてくる熱い感触を楽しんだ。

「……ん、みゅ」

 少しすると、ゆめのキスが終わって

「…………」

(あらら?)

 また、不機嫌な顔でにらまれた。

「え、えーと、どうしたのゆめ? なんだか変だけど」

「…………………彩音がバカだから」

「そう、言われても………」

 何回目だこれ? ゆめにバカって言われるのは結構良くあるけど意味がわかんないことが多くて困る。

「……彩音は私が好きで………ロリコンで、変態」

 ……好きなところまでは同意するけど。

「……………なのに…………」

「?」

 ゆめは口数が少ないまま、じぃっとあたしを見つめてきた。

 少しもじもじと、いじけたようで怒ったようでもある目で。

「……………」

「……なのに?」

 続きを言いださないゆめに促そうとしてみると

「……いつも、美咲とばっかり」

 今日一番いじけた声を出した。

「はい?」

 あたしは首をひねりって答える。

「それは……しょうがないでしょ。美咲はあたしんちに住んでるんだから、いつも一緒にいるのは当たり前じゃん」

「……そういうことじゃ、ない」

「??」

「……彩音は私のことが好き」

(ま、また話が飛んだ)

「……私も彩音のこと、好き」

「う、うん」

 今の状況がよくわからないって思ってるのに、ゆめはあたしを一心に見つめててあたしもその視線を外そうとしない。

 潤んだ瞳のゆめとベッドに押し倒されながら見つめあう。

「……だから、彩音になら……なにされても……」

「ん? なんていったの?」

 もごもごと普段から小さいその声にあたしは素直に聞き返すと

「……っ!」

 すごい目でにらまれた。

 な、何で? どうしてこんなにゆめは怒ってるの?

 怒りの理由がわからないまま、ゆめは気づいたら顔を真っ赤にしてて衝撃的なことを言ってきた。

「……彩音に、なら……何でもさせてあげるって言った」

「へ?」

 え、えーと?

「……彩音はロリコンで変態でロリコンなんだから……私の、こと……好きに、すれば……いぃ」

 これは、……えーと。もしかして

「………っ」

 最後には消え入りそうな声を出して恥ずかしさに涙するゆめの強い視線を受けてあたしはあることを思う。

 ゆめって誕生日はあたしや美咲よりも早いけど見た目は幼いし、こういうことすごく恥ずかしがるし、自分から言ってきたこともないから全然結びつかなかったんだけど。

(これはもう、【そういうこと】だよね?)

 そういえば、最初の体が目的? っていうところから妙な感じだし、あんなキスをしてきたし、それにゆめとは大分してないかも。

 美咲とは……まぁ、一緒に住んでることもあるけどゆめと二人きりになるのって美咲があたしの家に住むようになってからはかなり少なくなったし、そもそも回数だって数えるほどしかない。

(ゆめもこんなこと思うんだなぁ)

 ゆめが今いっぱいいっぱいなのはわかってるつもりだけど、ついそんなことを思っちゃう。

「…………彩音?」

 おっと、ゆめが不安そうだ。

 こんなこといくらあたしが相手だからってすっごく恥ずかしいだろうしね。ましてゆめからなんて今まで言ってきたことないんだし。

(エッチな娘だと思われたらどうしようとか考えだしてるところかな)

 それをからかったり、焦らすのも手だけど、もうゆめも限界だろうし。

「ゆめ」

 あたしは優しくゆめのことを呼んで

「ふぁ……」

 体を入れ替えて今度はあたしがゆめを組み敷いて、軽くキスをする。

「ごめんね、ゆめ。どうもあたしが鈍感だったみたい」

「………彩音が、バカなのはいつものこと」

「あー、ひどいなぁ。確かに今回はちょっと悪かったかもしれんないけど」

「……ちょっと、じゃない。それに、彩音は……いつも……鈍くて、バカ」

「またこの子は……いいよ。そんなこという口は」

 ゆめの手を取って、指を絡める。

「塞いじゃうから」

 そして、体ごとゆめに重ねて再びキスを交わした。  

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