「ねぇ、彩音」
ベッドの上で体を寄せ合う私たちは同じ枕でお互いを見つめあっている。
「んー?」
「なんでいきなりプロポーズしてくれたの?」
体の火照りは収まっても心の高鳴りが抑えきれない私はこの不可解な婚約について聞くことにした。
(……もっとも、少し予想がついてるんだけど)
「えー、と……まぁ、複雑な事情があるというか」
(…………)
ずっと私のことを見てた彩音が無意識なのか意識的なのか瞳をそらす。
いくつか予想してた内の一つが当たったらしい。
外れるとも思ってなかったけど。
「ゆめにもプレゼントしたから、美咲にもしないわけにはいかないじゃん」
(……ほら)
なんとなくそう思ってた。
この鈍感で、人の心を理解するのが下手な彩音が自主的にいきなりプロポーズなんてするわけがない。
大方ゆめのことを怒らせて、埋め合わせにしたとかそんなんでしょ。
まぁ、プロポーズしてくれた彩音の気持ちが嘘じゃないっていうことくらいはわかってるからそれ自体は嬉しいんだけど。
(けど)
「なにそれ、私はゆめのついでなの?」
嫌味くらいは言わせてもらうわよ。
いくらこのバカが先とか後が優劣じゃないって考えてるのがわかっても、多分状況的に私に先にするっていうのが彩音の中ではありえないことだったんだってわかっても。
(二番目にされてむかつかないわけが……)
「は? んなわけじゃん。何いってんの?」
さっき何でしたのって聞いた時は気まずそうにしてたくせに今はしっかりとあたしを見てる。それも、少し怒ったような呆れたような顔で。
(……………ふん)
そんな彩音に私はなんとも表現しがたい気持ちを感じて心の中で笑った。
あまりにも彩音が本気でそれを言ってるから。
確かにこいつはバカでむかつくところもたくさんある。
けど……
「………………彩音」
「ん?」
頬に両手を添える。
(そういうのを全部含めて、私は彩音が好きなのよ)
「あ……」
私の気持ちを視線で伝えると何をされるかわかった彩音がゆっくり目を閉じて、それを合図に私は彩音に口づける。
「ね、もういっかいしよ」
それから愛をささいて。
「………ん」
彩音が無言でキスを返すと私たちは再び愛を確かめ合った。
二人にプロポーズ。
経緯もさることながら、普通のことではないです。けど、彩音は二人に一生一緒にいたいと伝えました。彩音は二人のことをまるで差をなく愛していますので、彩音からすると二人にプロポーズをするのは何にもおかしいことではなかったです。もっとも今回彩音はプロポーズをするつもりではなく、言葉は悪いですけど流されてしてしまった感もありますが……とにかく彩音は二人に一生の愛を誓いました。
二人はそれぞれそれを受け入れていますけど、心の中は彩音とは違うかもしれません。もちろん、美咲はゆめを、ゆめは美咲のことを大好きと思っています。それはもう心の底から、代わりなんて存在しないレベルで。
ただ意図的に二人のシーンを書いてこなかったのも事実です。
特に美咲なんかは彩音への独白や、色々嫉妬したりもしていますし。ゆめはゆめで二人が一緒に住んでいることをうらやましく思っています。
彩音の二人に対する気持ちと二人の二人に対する気持ちは同じではないかもしれません。……今更という感じはありますが書き手としてはそういう認識です。
そして彩音は二人が自分と同じだと確信しているから二人のことを怒らせることもあるし、なんで怒らせたのかもわからないです。
今までは彩音と二人きりというのを多く書いてきましたけど、このプロポーズをきっかけに少し違う形でお話を書いていくこともあるかもしれません。
たとえば三人で……とかもちょっと考えたりしてますが……百合においてそれがどのくらい求められているのかもわかりませんし……一定以上ご要望があればあるいは。