この前の出来事から私達の関係は少し変わっていった。
ローラと一緒にいるといつもキスのことを意識しちゃう。
レッスンをしているときも、食堂でご飯を食べているときも、小春ちゃんと三人で話をしているときも。
ローラの唇柔らかそうだなとか、触ったらどんな感じなのかなとか。ローラはいい匂いがするし、キスをしたらローラの香りに包まれたりするのかなとか。
そういうことばっかりを考えるようになっちゃってて、気づけばうまく話が出来なくなってた。
好きなのに一緒にいると困っちゃうっていう矛盾した状態だったけど、それならまだ私だけの問題だったのに。
(あれ?)
気付けばローラも態度も変わってた。
私といても楽しくなさそうであんまり話してくれない。話をするときの距離も離れちゃってて、会話もぎこちなくなっていつの間にか一緒の時間が減るようになっていた。
あの島にいた時のように喧嘩をしたわけじゃないけど、ローラと話せないのがそれがたまらなく寂しくて、ローラと会えない時間は胸に穴が開いたように悲しくて。
でも、どうしたらいいかわからなくて。
「ゆめちゃん、ローラと喧嘩でもしたの?」
お休み前の夜。小春ちゃんのベッドに並んで座りながら話しているとそう言われた。
「喧嘩っていうわけじゃないんだけど……」
「この前私が変なこと言っちゃったからかな?」
「んー、そんなことはないって思うんだけど」
関係なくはないかもしれないけど、でも直接関係があるわけじゃないしそもそも私はそうかもしれないけどローラの方はどうして私を避けているのかよくわからないし。
「私が原因かもしれないのにこんなこと言うのもおかしいかもしれないけど、ローラとちゃんと話をした方がいいんじゃないかな? このまま疎遠になっちゃうなんてことはないだろうけど、思ってることがあるならちゃんと話をした方がいいよ」
小春ちゃんは私の手をとってそう伝えてくれる。
その気持ちは嬉しいけど
(ローラといるとキスを意識しちゃうからうまく話せないなんて……)
言えないよね。
「ゆめちゃん」
「な、なに? 小春ちゃん」
ぐいって体を寄せてきた小春ちゃんに少しドギマギしちゃう。
「ゆめちゃんが何を悩んでいるのか私にはわからないけれど、でもすれ違っちゃってるなら話をした方がいいよ。二人はお付き合いをしているんでしょ。だったら、一人で悩むんじゃなくてローラと二人で気持ちを伝えあって悩んだ方がいいって私は思うな」
「小春ちゃん……」
間近に見る小春ちゃんの目は真剣そのもので本気で私の……ううん、私達のことを心配してくれているっていうのが伝わってくる。
そして、その本気の想いは私の胸の中に吸い込まれるように入ってきた。
「ゆめちゃんの悩みはローラの悩みだし、ローラの悩みはゆめちゃんの悩みだよ。そうやって二人で答えを見つけていくのがお付き合いをするっていうことなんじゃないかな」
「……………うん、そうだよね」
小春ちゃんの言葉に私は深く頷く。その通りだ。
二人で行く道を間違わないように、二人で向かう場所を誤らないようにちゃんと自分の気持ちを伝えて、二人で行くべき道を見据えて歩いていく。
それがお付き合いをするっていうこと。
小春ちゃんの言う通りだ。
そのことに気づけた私は
「小春ちゃん、ありがとう」
私は久しぶりに取り戻した笑顔で一番の親友に御礼を述べるのだった。