その日は電話もメールもできなかった。
優衣さん、前に先輩がお姉さんみたいな人って言っていた人に送られて私は泣きながら家に帰って、後は部屋に閉じこもった。
泣いて、泣いて、泣いて。泣き続けた。
先輩があんな人だなんて思わなかった。
ううん、今でも思ってない。でも、本当に私が好きだったなら……ごっこだったなんて、言える?
私なら言えない、そんなこと……絶対言えないはずなのに。
もう、色々考えて、何も解決しなくて悲しくて、つらくて先輩の言ったことをちゃんと考えたいのに、先輩が本当はどういうつもりだったんだろうってきちんと考えたい、ううん、言葉通りの意味じゃないっていう意味を探したいのに、思い出すことだってうまくできなかった。
だから
……だから。
震える手をドアノブにかける。
ビートを高めていく心臓に落ち着いてといいながら私はゆっくりと手に力を込めてドアを開けた。
怖い。
すごく、怖い。先輩に会いたいけど、会いたくない。
会いたくないけど、会いたい。
会って、もう一回本当の気持ちを聞きたい。昨日のことは何か理由があって、嘘をついたんだって信じたくて、だからすごく怖くてすごく不安だけど、今日、ここに来れた。
独特の薬品のにおいをかぎながら私は先輩がいつもいるはずのベッドに向かっていく。
「あ、あれ……?」
カーテンで仕切られているベッド。でも、そのカーテンはシルエットを見ることはできて、いつもなら、そこに先輩の影が見えてて、だけど……今は
「先輩……?」
カーテンを開けた先、いつも先輩の空間があったベッドが綺麗に整頓され、先輩がいるのが当然だったベッドが、何もない。
まるで、先輩が初めからいなかったような錯覚を受けるほど、私はこの【普通】の光景に心を揺らした。
「先輩……」
冷たいベッドを指でなぞり、先輩を呼ぶ。
だけど、答えてくれる人はいない。
「…………」
静かな部屋に、独特の薬品のにおい。私に吹き付けるさわやかな風。
それは当たり前の保健室の光景。でも、私には……
そして、この日。
先輩は保健室から消えた。