二人が対照的な顔をしてたのが印象的だった。
千秋さんは明らかに辛そうな顔をしていて、夏目先輩は………
唇の端を吊り上げていた。
そのまま、こっちに来なさいっていう夏目先輩に言われるままベッドに呼ばれて、
そして
「っ!!!???」
ファーストキスを奪われていた。
柔らかな唇。甘いシャンプーの匂い。頬をくすぐる髪。
「おいし」
ぺろりと唇を舐める赤い舌。
「あ……」
そこでやっと何をされたのかに気づいて、呆然となったけど
千秋さんに後ろから抑えられて口元に触れることもできない。
「初めてなんだ?」
女の子のいちばんたいせつなものの一つを奪っておきながら先輩は、ご飯食べた? くらいの感覚で聞いてきているような気がする
「…………ぁ……」
私はうまくしゃべられないほど動揺していて、その反応が答えを物語る。
「……それじゃ、こういうことも初めてよね」
それが先輩の琴線に触れたのかわからない。でも、先輩は楽しそうな笑みをこぼすと私に手を伸ばして、パジャマのボタンに手をかけた。
「あ、あの!」
何をされそうになっているのかわかって、私は焦った声を出す。
「先輩、私……誰にも、言ったりなんか」
必死に声を出すけど、先輩は手を止めることなくパジャマのボタンをはずしていく。
「先輩!」
体が外気にさらされていくのと比例して焦りと不安が高まっていく。
「蘭」
「え?」
「蘭って呼んで」
すでにパジャマのボタンをはずし終えて、蘭先輩は私の心なんてお構いなしと言った様子で平然と言った。
「蘭、先輩………」
「そう、これからはそう呼んでね。こんなことをしてるのに名前も読んでくれないなんてさびしいもの」
と、蘭先輩は再び私に手を伸ばす。
「すべすべ。綺麗な肌ね」
「っ………」
お腹の少し上あたりを蘭先輩の綺麗な手が這いずる。
(……っ)
ゾクゾクとした感覚を感じながら、私は迫る危険にどうすればいいのかと頭を巡らせていた。
この人は私の話を聞いていない。聞く気がない。
このままじゃ、本当に……
逃げようにも体を抑えられて
(そうだ、千秋さん)
あまりに異常な状況に頭から抜けていたけど、千秋さんがいる。
だ、だってあんなことをしてたってくらいなんだから二人は恋人の、はず。そんな中に私が入っていくのなんて、おかしいこと、だもの。蘭先輩が何を考えてるのかわからないけど、千秋さんならきっと
そんな思いを抱いて私は振り返るとすがるような目で千秋さんを見た。
「………」
(千秋、さん?)
千秋さんは私の想いとは裏腹に私を、同情にも嫉妬にも見えるような顔で見つめるだけで何も言ってはくれない。
「っ、あ……」
「んっ……ちゅ……ぺろ」
「っ〜〜」
体をまさぐられながら首筋にキスをされて舐められた。
「っ……」
相変わらず動きは取れない。
「じゅ、ちゅ……んっ……はぁ…はむ……」
「や、ぁ……んっ」
肌に口づけられて、吸われて、舐められて……どれも知らないその感覚に私は羞恥に体が熱くなっていく。
「っ……千秋、さん……」
体の駆け巡るムズかゆい感覚に心を揺さぶられながらも私は、それでも千秋さんにすがった。
日本に帰ってきて初めてのお友達。千秋さんは私の不安を消してくれた。
その千秋さんなら
「っ……」
千秋さんは助けを求める私から目を背けて、代わりに
「千秋」
蘭先輩が千秋さんを呼ぶ。
「貴女もしてあげなさい。お友達なんでしょ」
「っ!!」
死の宣告にも思える言葉。
それでも私は千秋さんを呼んで
「千秋、さ………っ」
その唇を千秋さんにふさがれた。