「ぁ、っは、……んっ」
消灯時間も過ぎた深夜。
ベッドの上で掛布団まですっぽりとかぶり私はくぐもった声をもらす。
「ふぁ……あ、んぁ……」
体の中を悦楽が駆け抜けていく。
(こんな……こんな、こと……)
もう寝てることはわかってるけど、部屋には冬海ちゃんがいるのに。もしかしたら何かの拍子に気づかれないとも限らないのに。
「ぁ……だ、め……もう……」
けど、一度灯った快楽の火は燃やし尽くさないと消えることはなくて私は自慰に耽り、そして
「っんぁ…ぁ、っんんっっ……――」
声を押し殺しながら絶頂に耐えるために身を縮めた。
(……ちあ、きさん……)
頭の中に千秋さんを思い浮かべて。
「はぁ…あ……ぁ」
布団から顔を出して、乱れた呼吸を整える。
(……ごめん、なさい……ごめんなさい)
心の中で千秋さんのそうやって謝った。想像、してしまっていたから。千秋さんに触れられることを考えてしまっていたから。
あんなことがあったのに、醜く、浅ましく千秋さんを求めてしまった。
こんな私だから嫌われたのに、反省もせずに千秋さんのことを想像した。千秋さんの手を、指を、肌を、唇を、声を、千秋さんのすべてを。
(それとも……嫌われたから?)
もう望めないから? 望んでも手に入らないから? 千秋さんと体は重ねられても、心を重ねることはできないから?
考えたって理由はわからない。
わかるのは
(変わってしまった自分がいること)
それだけ。
そして
私のせいで変わってしまった子がこの部屋にいることに私はまだ気づけないでいた。