「っ!!」
毛布の下の体がビクって大きく震えた。
「…………」
それから沈黙。寝てるふりをするべきか、それとも誤魔化すのか迷っているんだと思う。
「……うなされてたみたいだけど、大丈夫?」
あえて意地悪にいった。
「あ、えっと……その、ちょっと、調子悪くて。ぁ……」
「ほんと、顔すごく熱くなってる。汗もすごい」
「あの……大丈夫、だから。そ、そうだ。水取ってきてもらえませんか?」
「水なんかで治るの?」
「え……?」
今貴女が欲してるのは、冷ますことじゃない。もっと熱くなることでしょう。
熱くなって何も考えられなくなることでしょう。
私は無言で毛布に手をかけると
「ダメっ!」
切羽詰った彼女の声を無視して彼女の体を露わにした。
「み、みないで……」
乱れたパジャマと、汗ばんだ肌。
隠そうとしていた秘密を露わにされて冬海ちゃんは必死に胸を隠した。
「自分でしてたんだ」
「これは…その……」
「昼間のことが原因?」
「っ………」
彼女の頬が羞恥に染まる。その姿がいつもとは別の意味でとても愛らしく見えて、私の中の何かを刺激する。
「……わかるつもり。冬海ちゃんの気持ち」
言いながらベッドへ上がっていく。
「え?」
「あんなの見ちゃったんだもの。考えちゃうわよね。心配しなくても、軽蔑したりなんかしない」
【普通】ならそういうことを恐れるんだと思う。だからまずは安心させるために言ったけど、それは彼女のためというわけではなくてあくまでもこれからのため。
「あっ………の!?」
私はベッドに座って、冬海ちゃんのお腹に触れた。
無垢な肌色。きっとまだ他人を知らない少女の柔肌。熱く火照り、更なる快感を求める女の体。
「緊張しなくても大丈夫、ほら」
そういって私は冬海ちゃんの片手を取って自分の胸に当てさせた。
「私も同じなの」
(……全然違う)
「あ……」
彼女の体から力が抜けたのを私は見逃さない。その一瞬の隙に私は未だ守られていた彼女の胸に触れた。
年相応の膨らみかけた胸。すでに自分の手で十分に刺激を受けた未成熟ながらもそこは、
「ふぁ……」
性感帯との役目を果たしている。
「ねぇ……冬海ちゃん」
「は、い……」
「一人で我慢しなくていいの」
千秋さんのあんな姿を見てびっくりしたでしょう? 悲しかったでしょう?
好きな人が自分のものにならないってわかった瞬間はとても絶望的で、それでも気持ちを捨てるなんてできなくてこうしていけないとわかりながら自分を慰める。虚しいってわかってても、わかってるからこそやめられなくなる。
「……私も一緒」
「い、っしょ……?」
私と冬海ちゃんは一緒なんかじゃない。私は彼女のためと言いながら自分の欲望を押し付けようとしているに過ぎない。都合のいい言葉で彼女の気持ちを操ろうとしているだけ。
「……そう。だから……」
冷静な自分が止めろと言っている。
純粋な少女の気持ちを利用して自分を満たそうなんて人のすることじゃない。
そんなことはわかっていても、
「……私が、してあげる」
今更私は戻れないところにいた。