夜明け前の一番暗い時間。
窓からもれるわずかな夜の光だけが部屋を照らす中、私たちは冬海ちゃんのベッドの上で身を寄せ合っていた。
「………………鈴さん」
「……………うん」
体の熱が冷めてしまうとの同時に心の中も冷静になってしまって
(………何してるのかしら?)
自分のしてしまったことの重さを痛感する。
純粋無垢な少女に知ってはいけない快楽を教えてしまった。これじゃ、あの人と一緒。私をおかしくさせた蘭先輩と。
そして、いけないことをしたという自覚があるのに。
満たされている自分がどこかにいる。誰としていても心に空虚な風が吹いていたような気がするのに今は少しだけ潤っている。
「……………ごめんね。いきなりこんなことをして」
今自分が危険なことを思っている。その自覚が逆に常識的な発言をさせた。
「い、いえ……その……すごくびっくりしたけど……でも……私……ぁ」
まだ何かを言いたそうだったけれど私は気を使ってくれる彼女の好意に甘えて優しく頭を撫でた。
「………ありがとう」
「いえ……」
ほとんど暗闇の中ではあるけれど照れたように笑っているというのは想像がつく。
ただし、頬を染めているというところには気づけていない。
「けど……びっくり、しました。まさか、鈴さんも同じ、だった、なんて」
私は最初から勘違いをしていた。どうして彼女が私を受け入れたのか。そもそもなぜ自慰行為をしていたのか。
「……うん。私も」
それを勘違いしたまま
「……千秋さんのことが好きだった……から」
地獄へと突き落とすことを言えてしまう。
「ぇ………」
小さく、しかし落胆の溢れた声を私は聞いてはいた。でも、今は自己満足を満たすことの方が私にとっては重要で。
「……好きなのに届かなくて……手に入らないってわかっちゃって、けど……想いを捨てるなんてできないんだよね」
「……………っ」
冬海ちゃんの目に涙が浮かんでいることを私は気づけない。
私は言い訳をして自己陶酔にひたっているだけで、今こそ謝らなければいけないことをしているのに気づかない。
「だから、冬海ちゃんの気持ちもわかるつも………っ」
急に言葉を遮られた。
「っあ……ん」
冬海ちゃんの唇で。
行為の最中はしていなかったキス。これもまた自己満足の言い訳に過ぎないけれど、キスは本当に好きな人と初めてをなんて考えていて、あえてしていなかったキスをされていた。
「…冬海ちゃん……?」
いきなりキスをされたのかはわからなくて私は呆然と彼女を呼ぶと、
「……もっと……して、ください」
「え?」
「もっと……私を気持ちよくさせてください。何も考えられないようにして……全部……全部、鈴さんで埋め尽くしてください」
「どう、したの?」
初めからすれ違っていた私には冬海ちゃんの態度の変化が理解できない。それもまた彼女の感情を逆なでして
「……お願いします……」
私からしたら理由のわからない涙を流していた。
その理由を問いただせばよかったのに私はそれよりも今目の前で泣いている少女の短絡的な欲求にこたえることの方が優先に思えて。
「……うん」
再び過ちを犯していった。