冬海ちゃんと関係を持ってから一週間。
その間蘭先輩との逢瀬を重ねることもあったけれど、ほとんどの夜をともにしたのは同室の少女。
夜、どころか放課後部屋に戻った時ですら彼女は私を求めてきた。
さすがに昼間はキス以上のことはしないけれど、どこか盲目的に私に傾倒し我を忘れようとする。
まだ無垢な少女の面影はある。けれども、その純粋さは背徳の歓びと、複雑な恋心のによって淀み、濁っている。
今ならまだ戻ることができるはず。溺れそうな彼女に岸から手を伸ばせば、彼女をこの欲望の渦から救うことができる。
でも、同時に引きこむことも私には可能なこと。
これ以上深みへと連れて行ってはいけないことはわかっている。自分がそれをされたからといって、他人にしていい理由にはならない。
そんなことは考えるまでもなくて……
(……でも)
「……鈴、さん」
就寝時間も過ぎ、日付が変わるころ。
私のベッドの前へとやってきた冬海ちゃんは頬を染め、瞳に熱情を宿し、甘えたような声で私を呼んだ。
(…………)
その姿に背筋を震わせる。
あの冬海ちゃんが、妹のように思っていた相手が。
まだまだ年相応に純粋で、いとけない心を持っていたはずの少女が今は知ってしまった未知の感覚にうなされ私を求めている。
私が変えてしまったことに対する罪悪感と、それを上回る言葉にしてはいけない道徳に反した愉悦。
二つの感情は合判してはいる。
けれど、決して五分ではない。
「………おいで」
私は自分の心の変化をどこか他人事のように感じながら冬海ちゃんのことをベッドに招き入れて
「ぁ……っ」
そのまま唇を奪った。
小さいけれど張りのある感触を楽しみつつその華奢な体を抱きとめる。
「………今日も、してください」
キスを終えて、冬海ちゃんはうっとりとしながら私に体を寄せる。
「……えぇ。もちろん」
その求めに応じるたび、自分の中の二つの感情の比率が変わっていく。
そのことに若干の不安と、不安を上回る期待を持ちながら冬海ちゃんとの逢瀬を重ねていった。