それから本能の赴くまま私たちは相手を求め続けた。幾度となく気をやり、それでも官能の嵐に身を投じ、何も考えられなくなるまで私たちは激しい時間をすごし、ようやく落ち着いたのはもう空が白みかけている時間。

 くしゃくしゃになったベッドの上で疲労のたまった体を倒し相手を見つめている。

「鈴……」

 千秋さんのかすれた声。

「……何?」

 私はベッドに投げ出された彼女の手を取り問いかける。

「……ありがとう」

 そう感謝を伝える千秋さんの瞳は多分これまでとは違う意味で潤んでいてその裏に隠されているものに想いを馳せないわけにはいかない。

「どこかで終わりにしなきゃって思ってたし、こうなったことに後悔はないけど。多分、一人じゃ耐えられなかった。だから、居てくれて本当にありがとうって思ってるよ」

「…………えぇ」

 私は小さく頷きながらチリチリと心がやけるような不安を感じていた。

「………………」

 千秋さんは私を見つめながら申し訳なさそうな顔で目を伏せた。

「私たち、さ。色々間違ってたと思う。ううん、というか間違えたのは私の方か。私のせいで鈴を………」

「……気にしないで。私が変わったのは、私がそう選んだだけなのだから」

「………………」

 千秋さんは蘭先輩のお気に入りになってしまった私を妬みこそしていても、その裏でずっと罪悪感を抱いていたのだと思う。でも、それ以上に嫉妬が勝ってしまい謝ることもできなくなっていた。

 私は今気にしないでと言ったけれど、それは本当。千秋さんがきっかけではあるけれど千秋さんを恨んだりはしていない。それがなぜかと問われればこれにも明確は理由はない。単純に好意を抱いていたからということなのかもしれない。

(それとも)

 今を受け入れているから?

「……ありがとう。優しいよね。鈴は」

 私が答えのない問いを自分の中でしていると千秋さんはそう言って再び切なそうな表情で、「本当に優しいよ……」とまるで謝罪でもするかのように言った。

 思えば千秋さんはずっと悲壮感と一緒にどこか私への遠慮というか、詫びているようなそんな態度が見えた。私はそれを感じつつも目の前のことにばかり気が言ってしまっていたけど、今思えば気づいておくべきだったのかもしれない。

「ねぇ、鈴。私たちさ……友だちに戻れるかな」

「………………」

 その一言に私は悟った。

 彼女は私の気持ちを知っていたのだということを。知った上で、蘭先輩を忘れるために利用したということを。

 そしてなにより私の気持ちに応えるつもりはないということを。

 とどまるべきだったのかもしれない。

 今夜彼女を受け入れた時点で私は彼女と恋仲になる機会を失ったのだ。

 私はそれを悟り

「もちろんよ」

 笑顔で自分の恋に別れを告げていた。

6−6/7話

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