先に眠ったのは冬海ちゃんの方で私の隣で穏やかな寝息を立てている。
「ん……ぅ……くぅ」
私はそんな冬海ちゃんを見ては胸がひしゃげるような気持ちになる。
冬海ちゃんを壊してしまったのは間違いなく私。
それも壊れてはいけない壊れ方。
私だっておかしくはなったけれど、それでも冷静な自分がどこかにいた気がする。けれど冬海ちゃんは私に向けてくれた愛情を歪めてしまった。
(……ごめんなさい)
何度も何度も胸をめぐる想い。
冬海ちゃんの気持ちには気づいていたはずなのに私はそれを見ないふりをしてきた。それどころか、わざわざ冬海ちゃんを傷つける態度ばかりを取って来てしまった。
謝ってすむことならいくらでも謝るけれど、もうその段階を通り過ぎている。
(どう向き合えばいいの?)
謝ることすらできず、たとえこのまま受け入れつづけたとしてもそれは過ちを長引かせるだけ。
ならやはり早々に冬海ちゃんと話し合うべきかと、心が揺れるけど
「……んぁ……鈴、さん」
寝言でまで私を呼ぶ冬海ちゃんに心の天秤が再び別方向へと傾く。
「……………」
本当は考えなきゃいけないことは他にいっぱいある。
蘭先輩のこと、寮母さんのこと、これからのこと。
いくらでも考えなきゃいけないことはあるけれど…………
(今は……)
私は冬海ちゃんに体を寄せた。
さっきまで感じていた肌の熱を再び感じる。
これからどうするべきかはわからない。だけど、
(今だけは)
せめて夢の中だけでも幸せになって欲しいと願いながら無垢な寝顔を見せる冬海ちゃんのことを強く抱きしめた。