「んぁ、ああっあ、だ、駄目……ふ、ゆみちゃ……ん」
今日も私は仰向けになったベッドの上であられもない声をあげさせられる。
二人の体液でぐっしょりと濡れたシーツはぐしゃぐしゃになっている。
「ん、っあ、…冬海、ちゃ……だめ、……わたし、また……」
彼女の指紋のついていないところなんてないほどに体中を弄られ、舐められ何度も絶頂へと導かれ体も心も疲労の極致にある。
「いいんですよ。またイッてください。私が鈴さんのことを気持ちよくしてあげますから。いくらでも鈴さんのこと愛してあげますから」
「あぁ、ぅん……っ! あぁ!!」
中指と人差し指で敏感になっているナカをえぐられ、ぷっくりと膨らんだお豆を音を立て激しくなめられる。
「ぁんっああ、く……ぅ……んっ!! ふああ」
もう何度もイかされ頭の中がぼやけているような感覚。それでも、冬海ちゃんの指も舌もしっかりと感じてしまって快感の熱が収まらず再び真っ白い閃光がはじけるような感覚に襲われる。
「っ、ああっぁっんぁ、っああ」
「じゅちゅ……ぅぅ……んちゅぱ、……んっ」
自分の喘ぎ声と、あそこを舐める音と、じゅぷじゅぷと濡れた膣をかき回される音。
その淫らな音楽が耳から私の脳を犯し、
「っ、ぁ、……ぁあっ……ぁっ」
「イッちゃえ」
「ふ、あ、んぁあっあああぁん!!」
冬海ちゃんによって今日何度目かもわからない絶頂を迎えた。
「っ……ぁ、ぁっは……ぁ」
ぐったりとしたまま荒い息を吐いて、私は肺に空気を送り込もうとするけれど……
「っ……ん、ぁ」
冬海ちゃんがおへそのあたりからねっとりと肌を舌でなぞってくる。
「ん……は、あぁ」
くすぐったいような心地いいような感覚に呼吸が乱され、それどころか
「ちゅ……あむ……」
苦みとぬめりのあるつけた冬海ちゃんの唇が私の唇に重なる。
「ちゅぷ……くちゅ、んぷ…れろ……あむ……ちゅ」
私の息苦しさなんてお構いなしに冬海ちゃんは舌を絡め、私を休ませる気なんてない。
「ふ…ふふ……ふふふふ」
キスを終えるともう聞きなれてしまった狂気的な笑いをされ、欲望と快楽が混ざり合った瞳で見つめられたまま「鈴さん」と背筋の凍るような声でよばれ
「もう一回、しましょう」
その誘い私は
「……うん」
と頷くごとしかできなかった。
少し前とまるで立場が逆になった私と冬海ちゃん。彼女の言うことに逆らうことができず毎日を過ごしている。
基本的には夜だけのことで、以前私がしていた時とは異なり放課後は何かをするということはない。
ただだからと言って冬海ちゃんは放課後どこかに行くということもなく部屋に一人きりになることが多い。
一方私は最初の頃は冬海ちゃんを気にして部屋で過ごしていたけれど、この数日は別の場所にいることが多い。
寮の中でありながらめったに人の訪れないその場所。
「ごめんなさい。手伝ってもらっちゃって」
「いえ、このくらい」
寮母さんの部屋で過ごす私は寮母さんの指示のもと机に並べられた資料をまとめている。
手伝ってと言われたわけではなく自主的に願い出たこと。何もしない時間を冬海ちゃんと二人の部屋で過ごすことに耐えられなくなった私は逃げ場所を求めて数日前からここで時間を潰すことにしていた。
邪魔になるとは思ったけれど、【お願い】のことがあるからか寮母さんは受け入れてくれて、数日はここで勉強をしたり本を読んだりもしていた。
ここにいる理由を何も聞かずにいてくれることはありがたかったけれど、同時に罪悪感からこうして作業を手伝っているというわけ。
「…………」
大したことをしてるわけでばないけれど、自分だけのことをしているよりこうして作業している方が気が紛れていい。
「………………」
「……春川さん?」
ただやはり冬海ちゃんのことは常に頭をよぎってちょくちょくと手が止まる。
「あ、いえ、何でもないです」
「……そう」
こうしたやり取りは一度や二度でなくすでに何度もしてしまっている。
その度に寮母さんは私を憂いた瞳で見つめてくる。
「……………」
けれど言葉は出てこず、それが逆に居心地悪く感じてしまい。
「……………聞かないんですか?」
つい、余計なことを言ってしまった。
「そうね。気にはしている」
寮母さんは手も止めず視線も送らずにぶっきらぼうな言葉だけをくれる。
「話したかったら話して」
「え?」
「無理には聞きださない。無理やりしたって解決にはつながらないと思うから」
「………」
一見ぶっきらぼうにも思えるけれど、今はその距離間が嬉しくて
「ありがとう、ございます」
そう自然とお礼を言っていた。
(優しいな)
この部屋で時間を潰すようになって初めて寮母さんのことをちゃんと意識した気がする。いや、もしかしたら話すようになって初めてかもしれない。
仕事と言えばそうなのかもしれないけれどそれでも、心の中にある暖かなものを感じた気がする。
それは意外なようにも感じたけど当然のようにも感じた。
なぜなら
(蘭先輩が好きな人なんだから)
好きになるのには理由なんていらないのかもしれないけれど、蘭先輩が好きになるというには理由があるような気もする。
でも……多分、この人は蘭先輩を避けている。
正確には蘭先輩だけでなく寮生とと言ってもいいかもしれないけれど。
また手を止めて今度は冬海ちゃんの事でなく寮母さんのことを意識して見つめる。
「なに?」
聞いてもいいことなのかはわからない。
でも自分から踏み出さなければおそらく知ることはない。
「……寮母さ……一年さんはどうして寮生の子と仲よくしないんですか?」
この人のことを知ったところで何になるのかはわからない。私にとってのメリットがあるようにも思えなかったけれど私はそれを聞いていた。
「………………さぁ」
一年さんは難しい顔で黙ったあとお茶を濁すかのような言葉を発した。
「……仕事柄、仲よくなりすぎるのも問題だろうし。それに、大人が出しゃばるよりも若い子だけで色々やっていった方がいいと思うから」
どうしてもまずそうな時には声をかけるさ。と後付けして一年さんは私から視線を外した。
(……多分、嘘だ)
言ってることはもっともだし、本音ではあるんだろう。でも、嘘にも慣れてしまった私は根拠なくそれを察し
「…………」
口をつぐんだ。
(……誰だって言いたくないことはある)
今はまだ冬海ちゃんの事で頭がいっぱいな自分の好奇心をそんな言葉を抑えながら私は夕飯までの時間をここで過ごすのだった。