(スピリチュアルやなぁ……)
さっそくえりちと二人きりになれた場所でうちはそう思った。
今いる場所はうちにとって特別な場所。
うちとえりちが多くの時間を過ごした場所。
生徒会室。
うちはこの場所を告白の場所に選んだ。
と言っても、うちが決めたわけやなくてえりちに連絡をしたらここにいると言われたから。
もうここはうちとえりちの居場所じゃなくてここにいる理由はないはずなのにこの場所になるなんて運命的というか、すごい偶然というか……スピリチュアル。
もっとも………
(……穂乃果ちゃんといたりしたんかな?)
それが現実的な答えな気がして、落ち込むけどそんなんでひるまんよ。
ここで気持ちを揺るがしたりなんかしたらにこっちに顔向けできない。
「……話って、なに?」
(あ……えりち……やっぱり綺麗やな)
窓を背にしてうちを見つめるえりちにそんなことを思う。
こんなの思う場面じゃないのはわかっとるんやけど、そう思わざるを得なかった。
だって久しぶりにえりちのことを見た気がするから。見てたけど、見れてなかったから。
流れるような金髪。知性を感じさせるアイスブルーの瞳。新雪のように白い肌。しなやかな体に、細くて長い指。すらっと伸びた脚。
どのパーツを取っても、うちにとってはこの世の何よりも綺麗で輝いている。
「希? どうかした?」
見つめたまま何も言い出さないうちにえりちは首をかしげる。
「……何でもない」
見惚れてたとは言えんよ。うちが伝えなきゃいけないのはそんことやないんやから。
「…………なぁ、えりち。うち、これからえりちのこと困らせるで」
始まりはそんな言い方。誰かさんには面倒って言われそう。
「?」
「……………」
あぁ、やっぱりうまく言い出せない。
だって、これで終わっちゃうんやで? 三年間好きで、ずっとえりちのことを想ってきた。その時間はうちの本当の望みではなかったかもしれんけど、幸せだったのも本当なんよ。
その時間が終わってしまう。親友としてえりちの側にいられる時間が終わってしまう。
(あ、……もう泣きそうや)
喉の奥がきゅうっとせつなくなって、胸が締め付けられる。
逃げだしたいって気持ちはあるんよ。だって、この告白はしてもしなくてもきっと後悔するから。
けど……
(……好きってこういうことやろ)
好きな人が幸せならそれでいいと思うのも好きの形なら、たとえ望みがないとしても好きって伝えたいのも好きっていうこと。
「うちな……えりちが」
にこっちがそれに気づかせてくれた。
だから、言える。伝えられる。
うちの気持ちを、素直な気持ちを。三年間積み重ねた想いを。
「……えりちのことが」
伝えてみせる。
「大好き」